02 April 2011

最判平成22・7・16判例時報2097号28頁(医療法人の出資の評価)

ある医療法人につき,基本財産が24億円あり,運用財産が17億円の債務超過のため,法人の財産全体でみた評価は7億円であった。この医療法人の定款により,出資社員(納税者)は,退社時の払戻しも解散時の財産分配も運用財産のみからなされることとされていた。この場合において,最高裁は,法人の財産全体を基礎として類似業種比準方式により評価することは合理性がある,と結論した。

  • 基本財産 +24
  • 運用財産 -17
  • 全体財産  +7

最高裁の理由付けのポイントは,定款を変更することにより,医療法人の財産全体につき(つまり基本財産も含めたところで)払戻しなどを求め得る「潜在的可能性」を有する,というものである。つまり,たまたま運用財産にだけ出資にかかる権利を有するように定めてあるけれど,出資社員は,あとで定款を変更すれば法人財産の全体を丸取りできる,というロジックである。

本件判決は,持分の定めのある医療法人に限った判断と考えたい。だがこのロジックの射程は,潜在的可能性としては,種類株の評価にも及びかねない。平川雄士・ジュリスト1413号58頁が示唆するように,もうすこしきめこまかに展開する必要が高い。判旨のテクストからは,次の点が手がかりになろう。

  • 最高裁は,評価通達の類似業種比準方式で評価することのできる「特別の事情」があれば,異なる評価をする余地を認めている。
  • 医療法人については,定款の定めのいかんによって「当該法人の有する財産全体の評価に評価が生じない」と述べており,定款の定めのいかんによってはこの場合に該当しない。

なお,定款で持分を変更すること自体,出資社員間に権利関係の変動を生じさせることがある。そのような変動に伴う経済的価値の移転や含み損益の実現をどう考えるか。本件の争点からは離れるが,そういった問題もありそうだ。