19 June 2011

大阪高判平成22・5・20(相続税で更正の請求を認めなかった例)

夫の死亡により第一次相続→妻の死亡により第二次相続→夫の兄弟グループと妻の甥(姪?)グループの間の相続争いにかかる別件京都訴訟の判決確定→甥グループによる別件大阪訴訟の提起→期限後申告→更正処分→別件大阪訴訟で和解→審査請求の取り下げ→更正の請求,という経緯。

大阪高裁は,一般論として,「相続税法55条,32条1号にいう『当該財産の分割』とは,民法906条の遺産分割を指す」と解した。そして,この一般論を本件にあてはめ,本件大阪訴訟和解は,夫および妻の「各遺産をめぐる一連の法的紛争を最終的に解決することを目的として」,兄弟グループと甥グループとの間の「権利義務関係を個別化しないでその一切を,将来に向かって不可分的かつ全体的に変更し確定させたものであった」とみて,この和解は民法906条にいう遺産分割にあたらず,したがって相続税法55条,32条1号の「当該財産の分割」にあたらない,として,更正の請求を認めなかった。

この判決は,すでに分割確定済みの権利義務関係を大阪訴訟和解で全体的に変更したというが,そうだとすれば,甥グループから兄弟グループに支払った解決金4000万円について贈与の問題が生ずるのではないか。逆に,判決の見方と異なり,大阪訴訟和解によっても遺産は未分割のままだったとすれば,これから新しく権利義務関係を個別化して相続人間で分割すれば,そこから起算して4月,更正の請求ができることになる。