10 November 2013

国連モデル租税条約7条1項の影響力―さらに低下

2013年10月下旬の国連専門家会議に,IBFDの報告書が提出されていた。この報告書は,国連モデル租税条約の条項が各国の締結する租税条約にどの程度反映しているかを調査するもので,1997年と2011年の調査の延長にある。今回は,1997年から2013年に締結された租税条約2036本を対象として,若干のものを除外したうえで,5条や7条,14条などいくつかの条項の反映具合を検討した。

手堅い基礎データとして重要であるばかりでなく,いろいろ興味深い結果を得ている。たとえば,
  • 恒久的施設の定義に関する5条3項のように,40%以上の租税条約で採用されているものがあること
  • 7条1項の限定的な吸引力主義(limited force of attraction)ルールのように,15%以下の租税条約でしか採用されておらず,しかも,1997年の調査時と比べても採用率が低下したものがあること
といった結果である。後者の7条1項については,「この条項の適用の困難の結果であるかもしれない(60頁)」と述べている。このことを,帰属主義への見直しとの関係にひきつけていえば,国連モデル租税条約7条1項の存在にもかかわらず,現実の二国間租税条約締結のトレンドとしては,OECD非加盟国の条約慣行としても帰属主義がほとんどになっていることになる。

こういった事実を実証的に明らかにするのは,大変な労力を要する。調査作業をリードしたWimとJanには,「公表おめでとう」といいたい。

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