- B社の再生を目的として民法上の組合を組成
- B社が新株予約権を組合に付与
- 個人Xが出資して組合員となる
- 組合が新株予約権を行使して,XがB株190万株を取得
X・・・・・・他の組合員ら
↑B株
組合
↑B株
B社
東京地裁は,所得税法34条1項にいう「労務その他役務の対価」に関する一般論として,
広く給付が抽象的又は一般的な役務行為に密接に関連してされる場合を含むと解したうえで,本件では,組合の主要組合員がB社に対して新規事業の提案,人材の提供,M&Aや投資などの経営に関する助言その他の役務の提供を行ったことが認められると認定する。そして,組合が新株予約権を行使してB株の発行を受けることによって得られた経済的利益は,「組合によるBに対する役務の提供の対価としての性質を有しており,それがそのまま本件組合契約に基づきXに帰属するのであるから」,本件経済的利益は「役務の対価」としての性質を有すると判示した。控訴審平成23・6・29で控訴棄却。上告棄却,上告不受理。
かねてより,①ネットネット方式における所得税基本通達36・37ー共20が組合の主たる事業の内容に従って組合員における所得区分を判定してきたのに対し,②佐藤英明・税務事例研究50号(1999年)33頁,39頁が,各組合員が組合の事業遂行上どのような役割を果たしているかという観点から各組合員に帰属する所得の性質決定を行うべきであると解していた。
本判決は,①の筋の考え方によったようにも見えるが,その場合,事業所得とならない理由がよくわからない。Xの果たしていた役割からすると,②によったとは読めない。X以外の組合員が役務の提供を行ったことをもって,Xの所得分類の理由にしているとすれば,上の一般論の下に第三の判定基準をとったのかもしれない。
いや,組合契約の解釈を変えれば,この事件は組合損益の組合員への税務上の配賦(allocation)が問題になっているのではなく,単にB株の現物分配(distribution)が問題になっているのかもしれない。りんご組合事件最高裁判決のような筋の考え方である。
いろいろな潜在的論点が明示的に構造化・争点化されないまま,確定に至った事件というべきではないか。
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