29 April 2015

Asian LII、かなりつかえる

Asian Legal Information Institute, Free access to Asian Lawで、アジア各国の法律一次資料を英文で読むことができる。たとえば日本法はこれ。かなりつかえる。

Hat tip: Tosh Weyman

AsianLII

23 April 2015

平成27年度税制改正のポイントと評価

佐藤英明先生と上西左大信先生の対談が、税研180号(2015年3月)にのっていた。2月13日時点のインタビュー。入念な準備がうかがえるやりとりであり、かなり突っ込んだ評価を加えている。

論点は今回の税制改正の全般に及んでおり、有益な指摘が多い。ほんの数例をあげるだけでも・・・

  • 確定拠出年金法の改正に伴って3号被保険者に税制上の措置が拡大されること、そして、個人単位での課税のため妻の年金は妻の分だけとなり、結果的に給付時にも課税されないことが多くなること、の指摘
  • 地方拠点強化・雇用促進の租税特別措置について、「企業が行きたいほうに背中を押すものでなければ効果を発揮しません」との指摘
  • スキャナによる書類保存制度に関連して、「税務調査や犯則調査についてコンピュータのデータにどのように対応するかは、法律ではほとんど決まってないですね」との指摘

この対談収録ののち、税制改正法案は、2月17日に国会に提出され、3月31日に成立している。

リンクを張ろうとおもってウェブサイトを検索してみたが、この対談部分は一般公開していなかった。広く読まれるべきものであるだけに、やや残念。

機関誌「税研」

22 April 2015

企業内法務の仕事と伝統的弁護士の仕事

柏木昇先生の表記の文章が、法学教室412号(2015年1月号)160-163頁にのっている。達意の文章である。
企業内法務の仕事が企業内法務に実際に携わっている当事者以外にはいまだにほとんど理解されていないらしい
という認識に基づき
法律嫌いで商社に就職した私がどうして血湧き肉躍る企業内法務の仕事の面白さに気づいたか
ということを説明する。文章の目的が明確。これに続く実話に臨場感があり、ひきこまれる。
  • 入社5年目、テキサスの倒産事件。日米の法運用がまったく異なっていた衝撃。
  • インドネシアの鉱山開発融資で、契約交渉の実戦。先生は何歳だったのだろうか。
引き出される教訓に、説得力がある。
  • 営業も財務も法律も「たいした違いはない」、つまり、それぞれの専門から取引の成立に取り組んでいく仕事であること
  • 法律知識以外に、取引知識と財務・経理・税務知識が重要であること
  • 専門家との人脈が大事であること
「意見を言うだけでは仕事は終わらない。」 いかにも先生らしい言葉である。

21 April 2015

今年の租税条約の判例研究会は6月に

なんだか恒例になっているが、ことしはウィーンで6月11日から13日に開かれる。日本の大学はセメスターの中途、授業を休講にすると苦しい時期で、なかなか出ていきにくいのが難点。でも、招待プログラムを見ているだけで、世界各国でいろいろな裁判例が登場していることが感じられる。

17 April 2015

Global Developments and Trends in International Anti-Avoidance Introduction Movie

これである。
この4分の動画をみるだけで、何が起こったか、雰囲気がよくわかる。

hat tip: Stef van Weeghel.

13 April 2015

租税法入門、平成27年度税制改正の補遺

平成27年度税制改正(2015年3月)のうち,特に『租税法入門』の記述に関係する重要なものとして,4点をアップしていただいた。有斐閣のこのページである。

租税法入門

11 April 2015

IMFと日本財務省共催のアジア租税会議、東京で開かれる

The Sixth IMF-Japan High-Level Tax Conference for Asian Countries "Emerging Tax Issues in Asia"である。途上国目線でみた国際課税の課題や租税条約について、報告と議論がなされた。

その公開セッションに出席する機会があった。途上国は最新のルールを導入し執行することを助言されがちであるところ、まずもって、全体として効果的な租税制度と租税行政を構築することが大事だ、というメッセージがよく伝わった。たとえば、移転価格課税をやみくもに強化する以前に、まずは税務執行の足腰をきちんとする、といったような課題である。法にのっとった適正な執行態勢は、ビジネスのためのインフラとして重要である。このことは、企業からのプレゼンターの意見からも、感ぜられた。

以前に注目したスピルオーバーに関するペーパーは、IMFのボードで議論して公式の位置づけを与えられたものであるとわかった。また、租税条約についても、2010年以降に香港が租税条約網を大きく拡大し、モンゴルが濫用のみられた4条約を破棄したことなど、種々の興味深い動きを知ることができた。租税条約上の自動的情報交換を実施するための執行コストに、途上国が対応できるかという論点も、はっとさせられる。


08 April 2015

今年の重要判例解説

ジュリスト1479号「平成26年度重要判例解説」が出ていた。租税法判例の動きを佐藤英明教授が網羅的に解説。とくに取り上げられた6件は、固定資産税2件のほか、ライブドア損害賠償課税事件や、IBM事件、日産自動車事件、Yahoo事件で、いずれも注目の事件。それぞれに、読みごたえがある。


平成26年度重要判例解説

05 April 2015

最判平成26年12月12日延滞税が発生しないとされた事例

簡単な時系列にすると、次の経過をたどった。
  1. 納税者が法定納期限内に相続税を完納
  2. 市川税務署長が減額更正、過納金を還付
  3. 市川税務署長が増額更正、納税者が増差本税額分を納付
争点は、1の法定納期限の翌日から延滞税がかかるか否か。解釈論としては、国税通則法60条1項2号「納付すべき国税があるとき」にあたるか否かが問題。

東京地判平成24年12月8日と、控訴審である東京高判平成25年6月27日は、延滞税がかかるとした。そのロジックは、次のようなものだった。
  • 2の減額更正により、減額された税額に係る部分の具体的な納税義務が遡及的に消滅する
  • その後に3の増額更正がされると、増額された税額に係る部分の具体的な納税義務が新たに確定する
  • よって、新たに納税義務が確定した増差本税額について、更正により「納付すべき国税があるとき」に該当する
これに対し、最高裁第2小法廷は、本件の事例判断として、延滞税がかからないとした。いわく、
本件各相続税のうち本件各増差本税額に相当する部分は,本件各相続税の法定納期限の翌日から本件各増額更正に係る増差本税額の納期限までの期間については,法60条1項2号において延滞税の発生が予定されている延滞と評価すべき納付の不履行による未納付の国税に当たるものではないというべきであるから,上記の部分について本件各相続税の法定納期限の翌日から本件各増差本税額の納期限までの期間に係る延滞税は発生しないものと解するのが相当である。
下線は引用者による。「当たるものではない」ことの論証として、 第2小法廷は、本件の事実関係につき、
  • 納税者として回避し得なかったこと
  • 税務署長は相続土地の評価につき減額更正をしたにもかかわらず自らその処分の内容を覆して相続土地の評価に誤りがあったことを理由に税額を増加される判断の変更をしたこと
を指摘する。そして、本件の場合において延滞税の発生を認めると「明らかに課税上の衡平に反する」と評価し、「納付の遅延に対する民事罰の性質」を有する延滞税の趣旨・目的に照らし、延滞税の発生は法が想定していないとする。

この点につき、千葉補足意見は、「特殊な事情」あるいは「例外的な事案」であることを補足する。これに対し、小貫意見は多数意見の結論に賛成するが、理由が異なる(国税通則法61条1項1号の特例による控除期間があった事案であったため結果的に多数意見と結論が同じになった)。

学説では、谷口勢津夫『税法基本講義第4版』(弘文堂2014年)110頁が、還付に関する法律関係を論ずる箇所で、納税者から還付請求申告書の提出があったときに成立または確定するという解釈を退ける文脈で、
誤って過大な金額が還付された場合、その後にその誤りが発見され、修正申告または課税処分がされたときは、納税者はその金額のうち納付すべき税額に相当する部分に加えて、延滞税をも納付しなければならなくなる。
から、当該解釈をとるべきでないとしていた。

12月12日の最高裁判決ののち、2015年1月、国税庁は同様の事案に係る延滞税についてアナウンスを出した