15 March 2020

Fordham symposiumの記録がでていた

2018年10月26日に「新しい国際課税レジームの未来」と題するシンポジウムが,ニューヨークのFordham大学で開かれた。2017年末の米国税制改革TCJAが国際課税ルールを激変させたことをうけたシンポジウムとして注目されるものであったが,これまで,短いブログ紹介ではほんの概略しかわからなかった。

このシンポジウムの内容が再現されて,スライドや注記が付されたものが,ここからダウンロードして読めるようになっていた。正式引用はSymposium, The Future of the New International Tax Regime, 24 FORDHAM J. CORP. & FIN. L. 219 (2019)。

100頁にもなる記録だが,刺激的なやりとりが続き,まったく飽きさせない。第1部は,GILTIを好意的に評価するAltshulerのKeynote Addressを皮切りに,Graetz, Shaviro, Kyser, Morseといった論者が,租税条約との関係,全世界課税vsテリトリアルの二項対立の破棄,拙速な起草による数々の不合理な帰結,などを赤裸々に語る。第2部は,新法の下で国外所得課税をめぐるプランニングがどうなるかを分析するShayのKeynoteに続き,Rosenbloom, Rolfes, Phillipsなどが, TCJAが安定的に維持できるか,オバマ政権のときの改革案との比較,などを論ずる。

それぞれの人たちがいいたいことをいい,異なる意見をぶつけあっている。TCJAのGILTIとBEATがOECD/G20 Inclusive FrameworkのPillar 2に影響していることから,blendingの可否をめぐる議論などは,そのままそっくり参考になる。日本法との関係ではとくに,非課税所得と費用控除のマッチングがここまで重要な問題であるか,ということを改めて感じた。読む人の力量によっては,もっと多くのことが読み取れるはずであろう。

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