調べ方といっても,一次資料については「租税条約へのアクセス」にリンクがある。ここではもうすこし入口を広げることを意識して,私が個人的によく参照する二次文献を挙げておこう。日本では特にここ10年くらいだろうか,租税条約に関する書物が多く出版されているので,以下に記すのはもちろん網羅的なものではない。
OECDモデル租税条約は2017年版が最新で,日本語訳や,解説書籍もある。国連モデル租税条約については,国連の会合に定期的に出席している方々の論説がある(最近のもの)。BEPS防止措置実施条約を織り込んだ解説も出ているし,税務行政執行共助条約の注釈を日本語で紹介したものもある。
それぞれのモデルの差異や,コメンタリーがいつどのように修正されたかについて,いわば「注釈の注釈」を精密に記載するのがLeidenのMaterialsで,聖書注釈の伝統を感じさせる(活字が小さいのが玉に瑕)。この流れをくむ日本語の書物もある。
古典的なものとして,アメリカ法律協会の1991年のこの書物は力を与えてくれ,いつ読んでもすばらしいと思う。フォーゲル教授のコンメンタールは,国際チームに引き継がれた2015年の英語版第4版があり,ドイツ語版は第7版が来年出るそうだ。よりグローバルな範囲をオンラインでカバーするのが,IBFDの国際共同プロジェクトによるGTTCで,私も参加している。GTTCは租税条約に関する各国裁判例のIBFDデータベースにリンクするのが売り。裁判例を集めて毎年研究会が開かれ,その成果が本になっている。
他にもよい書物がたくさんあるし,論文に至っては枚挙にいとまがない(たとえば最近味読したこの作品)。しかもこれらは日々量産されている。ここでは,モデル租税条約の起草過程を調べたい方のために公開データベースがあることを付記するにとどめよう。