07 March 2012

OECDがハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントに関する報告書を公表

国による課税ルールの食い違いは,aggressive tax planningの温床となる。OECDがハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントに関する報告書を公表。

オックスフォードで租税政策形成のシンポジウム

3月8日から9日にかけて行われる。「租税政策の形成における構造・プロセス・ガバナンス」と題するinitial reportは,英米独仏などの対象国において,租税政策の形成の重要性が十分に評価されていない(the importance of tax policy-making is undervalued)としている。

カジノ合法化に関する記事

Wall Street Journalにカジノ合法化に関する記事が出ている。Las Vegas Sandsの役員へのインタビュー付き。シンガポールの経験も書いてある。もっとも,東北復興のためといったものではない様子。

23 February 2012

22 February 2012

空港税関検査の合理性

財務省関税局が,行政刷新会議「規制・制度改革に係る方針」で示された一連の税関検査の合理性に関する検証についてを公表。成田空港に帰国するときに一瞬緊張するのは入国審査の場面で,そのあとは,預けた荷物が出てくればすーっと税関検査が終わるというのが私個人の印象。ただし私は日本への観光客ではないから,刷新会議の議論にはうまく対応しないコメントだが。

19 February 2012

国税不服審判所裁決平成23・6・28 所得税法183条1項「国内において給与等の支払をする」の意義

所得税法183条1項「国内において給与等の支払をする」の意義。

海外事業所で勤務する社員に,現地で所得税がかかる。すると,賃金手取額が少なくなってしまう。これを補うために,内国法人が海外勤務者について内規を設けた。そして,そのような外国所得税について,日本の内国法人が海外勤務者に代わって負担し納付することにしていた。

日本          外国
内国法人      海外事業所       
海外勤務者

この負担額のうち,社員が帰国後のものが問題とされた。税務署長は,「国内において給与等の支払をする」という要件に該当し,日本所得税の源泉徴収が必要だとした。これに対し,国税不服審判所は,支払事務が海外事業所で行われていたと認定し,源泉徴収義務はないと判断した。「国内において・・・支払をする」とは,「国内の事業所等において給与等の支払事務を取り扱うことをいう」と解釈したうえで,より具体的に,「支払事務を行った給与等の支払事務とは、給与等の支払額の計算、支出の決定、支払資金の用意、金員の交付等の一連の手続からなる事務をいう」と述べている。

同じ解釈は,所得税法212条1項「国内において・・・支払をする」についても,とられている。内国法人がドイツ法人に使用料を支払うさいに,たまたま役員がドイツに出張していたため,現地で支払ったという場合について,「国内で支払事務が取り扱われた」ものについては国内支払に該当するという質疑応答事例がある。

なお,国外支払であっても,国内源泉所得の支払者が国内に事務所,事業所その他これらに準ずるものを有する場合には,国内支払と同様に源泉徴収を要する(所得税法第212条第2項,事例)。

18 February 2012

京都地判平成23・4・14(学校法人学院長の退職金)

退職所得か給与所得か。

専修学校の学院長および校長を退職し,3億2000万円の退職金支給決議。その後,経営移譲とともに,再定義後の学院長職務とセンター長の職務のみを行うようになった。京都地裁は,勤務関係の性質,内容,労働条件等に重大な変動があったと述べ,退職と同視しうる特別の事実関係があったなどとして,所得税法30条1項「これらの性質を有する給与」にあたる(=退職所得にあたる)と判断した。

最近の先例として,大阪地判平成20・2・29判例タイムズ1268・164(学校法人太陽学園事件)も,退職所得にあたるとしている。学校法人の理事長および同法人の設置する高校・中学の校長の職にあった人が,校長をやめて同法人の設置する大学の学長になり,4802万円余の退職金の支払を受けた。大阪地裁は,勤務関係の性質,内容,処遇等に重大な変動があったと認定した(確定)。

なお, 執行役員(使用人)をやめて執行役になった場合について,大阪地判平成20・2・29判例タイムズ1267号196頁(シャディ株式会社事件)は,いわゆる打切り支給(所得税基本通達30-2の柱書にいう条件)ではない場合について,退職所得にあたるとした例。

09 February 2012

United States v. Wegelin & CO., et al.

米国司法省,米国居住者の脱税共謀の容疑で,スイスの銀行を起訴。The Economistの記事

米国FATCA規則を提案,EU各国が対応

米国がいよいよ,FATCAの規則を提案した。IRSのサイト

これと関連して,仏独伊西英が
Joint Statement regarding an Intergovernmental Approach to Improving International Tax Compliance and Implementing FATCA
を出した。政府間協力のアプローチを述べている。

日本国政府の対応は?


22 January 2012

Vodafone事件

インドの最高裁判所で英国の通信会社ボーダフォンが勝訴。報道記事が続々と。判決文はここから。

21 January 2012

最判平成18・7・14民集60・6・2369(高根町水道条例事件)

実体的な紛争の構図は,リゾート地の別荘所有者と,定住者・ホテル事業者との間で,水道料金をどう負担しあうか。もうすこし広くいえば,簡易水道事業にかかる費用をどう調達するか。

最高裁は,水道料金は「原則として当該給水に要する個別原価に基づいて設定されるべきものである」という。そして,このベンチマークからして,別荘給水契約者の水道料金値上げが合理性を欠き,地方自治法244条3項の不当な差別的取扱いにあたるとする。

このベンチマークは,自明のことだろうか。夏場にだけたくさん水道を使用する人については,別の原価計算のやり方もありえたのではないか。 地方公営企業法21条2項には「適正な原価を基礎とし」とある(簡易水道事業には適用がなさそうだが)。もっとも,「最大使用料に耐え得る水源と施設を確保する」ためには,水道契約者に等しく夏期割増料金を請求するほうが,理屈にかなっているかもしれない。住民基本台帳に登録していない別荘所有者に,条例制定に際して効果的に意見を表明する機会があるかも,気になる。

費用調達という観点からは,水道料金を据え置いたまま,「別荘所有税」のような法定外目的税を導入する場合はどうなるのだろう。

現在の簡易水道給水条例はこれ