26 May 2021

ニセコの不動産売却、札幌国税局の徴税

2021年5月26日 5時00分付けで、朝日新聞デジタルに、「1.4億円徴税、タイ当局通じ催告 条約適用外でも協力」という記事が掲載された。マルチ税務行政執行共助条約の適用外だったという。おやと思って確認してみたら、たしかに、2021年3月16日時点の情報では、タイはこれに署名はしていたが、まだ寄託や発効には至っていない。

他方で、この事案ではサモアの不動産会社がからんでおり、サモアとの関係では同条約の適用がある。上記の表のSamoaの欄をみると、2016年1月12日に発効しているからである。ということは、会社をめがけてかかっていってもらちがあかず、実質経営者たる個人をめがけてはじめて徴収の実があがる、ということか。

この記事の事実関係には、法的にみて興味深い点がいろいろと含まれている。とくに重要と思われるのが、国家間の徴収共助が機能するためには、フォーマルな条約ネットワーク以上に、国家当局間の連携関係がものをいうということ。また、この記事では実質経営者個人に対する「心理的なプレッシャー」がかかって納税に至ったと分析されており、これなどは、法執行におけるナッジ(nudge)の観点から検討すべき材料にもなるだろう。