24 May 2014

国連専門家委員会第9回の議事録がアップされていた

2013年10月の国連専門家委員会に提出された文書などは、以前からここで見ることができた。

この会議の議事録であるCommittee of Experts on International Cooperation in Tax Matters, Report on the ninth session (21-25 October 2013)が 、ここにアップされていた。

サービス課税については、議事録の16頁以下で、議論の様子が記されている。それによると・・・
  • パラ50から55 Liaoレポートのプレゼンテーションがあったこと
  • パラ56から62 Arnoldペーパーに基づきtechnical services条項の3つの案が審議され、第1案に支持が集まったが、当該条項の対象となるtechnical servicesを明確に定義することとされたこと
  • パラ63 Kanaを中心に新しい小委員会を組織し、(a) サービス課税について広く検討すること、(b) technical services条項について条文案と注釈案を準備すること
ということである。租税研究2014年1月号11頁で青山慶二教授が解説されていた点が、正式の議事録として明らかにされた。なお、Arnoldペーパーは、2012年夏に公表されていた。次回の専門家委員会は2014年10月末の予定。






17 May 2014

デジタルコンテンツとVAT

東洋経済オンラインのこの記事
海外販売までも消費税、スマホアプリの受難――グーグルプレイを通じた海外販売が課税対象に
という見出しがあり、中身をみてみると、デジタルコンテンツの課税について重要な論点を扱っていた。少なくとも、

  • 輸出免税証明と個人情報保護との相性
  • 外国事業者との関係での課税ルールの整備
が関係する。このうち後者については、政府税制調査会国際課税ディスカッショングループで

  • 2013年11月14日佐藤英明慶応義塾大学教授のプレゼンテーション(同教授の2014年2月講演がさらに租税研究2014年5月号に掲載)
  • 2014年4月4日内外判定の見直しと課税方式の見直しにつき審議

がなされており、対策が急がれる。その後、2014年4月20日には、B2B取引について、VAT Guidelineに対する各国の支持が表明されている。

13 May 2014

Shaviro, Fixing U.S. International Taxationの書評が、出ていた

Shaviroのこの本に対する真剣な書評が、Tax Notes International, May 12, 2014に出ていた。評者はMartin Sullivan。簡潔で、一読の価値あり。

  • Shaviroの主張を要領よくまとめている(選択のマージンが複数あることや、外国子会社所得の課税繰延が問題であることなど)
  • 対立する見解と対比している(Shaviroが外国税額控除をやめて外国税損金算入にすべきであるするのに対し、Avi-Yonahなどが租税条約に違反すると批判)
  • 2013年11月のBaucus上院財政委員長の選択肢Zは、課税繰延をなくしたうえで能動的国外所得を4割だけ所得免除するところ、これがShaviro提案の要請するところを満たしており、かつ、租税条約に反しない、とすること。
現実世界で改革が進まない中、米国の識者が出口を求めている様子が伝わってくる。Shaviro自身のコメントは、ここ。また、会社の居住地や、移行措置としての一括税などに関する紹介は、ここ


08 May 2014

OECD閣僚理事会、自動的情報交換に関する世界標準を支持

2014年5月6日、パリでこの宣言が承認された。2月のGlobal Standardを支持するもの。

宣言の第7項で、
URGE the OECD Committee on Fiscal Affairs, working with G20 members, to proceed rapidly with the elaboration of a) a detailed commentary to help ensure the consistent application of the new single global standard and b) the remaining technical modalities and safeguards including information and guidance on the necessary technical solutions, a standard format for reporting and exchange, and minimum standards on confidentiality; 
といっている。つまり、

  • a) コメンタリーを作成すること
  • b) 技術的様式とセーフガードについて詰めること
をOECD租税委員会に要請した。期限は2014年9月。


06 May 2014

貿易と資金洗浄―The Economist誌によるとかなりの規模

5月1日付け(紙媒体で5月3日付け)のThe Economistの記事の見出しに
貿易は、汚染資金に対する戦いにおいて、最弱の環である(Trade is the weakest link in the fight against dirty money)
とあった。 基本的なやり方は、輸入価格を過少にしたり、輸出価格を過大にしたりして、国内に資金を移転する。たとえば、メキシコのカルテルのためのフロント企業が、適正価格が100万ドルのオレンジを米国輸入者に売り、書類作業にかこつけて300万ドルチャージする。こうして、200万ドル相当分の汚染資金をメキシコに戻すことを隠ぺいする。このような手法は、脱税や外為規制を免れるためにも用いられる、というのである。

記事で触れられているBlack Market Peso Exchangeなどは、遅くとも1990年代には問題にされていたもので、新しい話ではない。国家間で組織している金融活動作業部会(FATF)も、手を焼いている。今回の記事から読み取れるのは、

  • 世界中で起きていること
  • 対策が困難であること(10ドルの商品を9ドルとか11ドルとかで売っている場合に不法送金の手段であることを当局が見抜いてきちんと執行することは到底不可能)

である。一日に税関を通過する貨物の膨大な量と、迅速な通関が欠かせないことを考えあわせると、透明化にはたしかに幾多のハードルがある。