21 March 2013

05 March 2013

東京地判平成23・2・4(NKで純額方式による計算が認められた例)

地裁判決のロジックは,
  1. 総額方式・純額方式・中間方式の3つの方法のいずれもが所得税法上の解釈として許容される(21-22頁)
  2. 当時の通達の読み方としても純額方式によるためには継続適用していれば足りる(26頁)
  3. 本件では純額方式による計算が認められる(28頁)
  4. (分離課税の対象となる所得を区分するかの論点に関して)通達は所得税法の解釈として合理的
という具合。2の点につき,地裁判決は,「被告の主張に係る取扱いを採用しようとするのであれば,法律又は法律の委任に基づく政省令において明確に定めるべきである(28頁)」と述べている。控訴審の東京高判平成23・8・4は控訴棄却,確定。

その後,国税庁は平成24年に所得税基本通達36・37共-20を改正し,総額方式が原則であるという方針を明らかにした。本来は法律事項に属する基本的な課税ルールではないか。

19 February 2013

offshore tax account



G20と前後して,The Economistが特集を組んだ。短い巻頭記事と,長い特別記事
巻頭記事にはすでに日本語訳もある(さすが翻訳ニッポン!)

いろいろと関連する動き。
英独仏の連携プレー
米国=スイスのFATCA協定
*だいぶ前のVillanova Symposiumが公刊された

 http://media.economist.com/sites/default/files/imagecache/full-width/images/print-edition/20130216_LDP001_0.jpg

01 February 2013

東京地判平成22・10・6訟務月報57・2・524 NK組合員の取得した経済的利益を雑所得とした例

個人Xの取得した経済的利益が一時所得か雑所得かが主な争点。事案はやや複雑で判決文だけからは不明な点も多いのだが,簡略化すると
  • B社の再生を目的として民法上の組合を組成
  • B社が新株予約権を組合に付与
  • 個人Xが出資して組合員となる
  • 組合が新株予約権を行使して,XがB株190万株を取得
というもの。

 X・・・・・・他の組合員ら
 ↑B株
組合
 ↑B株
B社

東京地裁は,所得税法34条1項にいう「労務その他役務の対価」に関する一般論として,
広く給付が抽象的又は一般的な役務行為に密接に関連してされる場合を含む
と解したうえで,本件では,組合の主要組合員がB社に対して新規事業の提案,人材の提供,M&Aや投資などの経営に関する助言その他の役務の提供を行ったことが認められると認定する。そして,組合が新株予約権を行使してB株の発行を受けることによって得られた経済的利益は,「組合によるBに対する役務の提供の対価としての性質を有しており,それがそのまま本件組合契約に基づきXに帰属するのであるから」,本件経済的利益は「役務の対価」としての性質を有すると判示した。控訴審平成23・6・29で控訴棄却。上告棄却,上告不受理。

かねてより,①ネットネット方式における所得税基本通達36・37ー共20が組合の主たる事業の内容に従って組合員における所得区分を判定してきたのに対し,②佐藤英明・税務事例研究50号(1999年)33頁,39頁が,各組合員が組合の事業遂行上どのような役割を果たしているかという観点から各組合員に帰属する所得の性質決定を行うべきであると解していた。

本判決は,①の筋の考え方によったようにも見えるが,その場合,事業所得とならない理由がよくわからない。Xの果たしていた役割からすると,②によったとは読めない。X以外の組合員が役務の提供を行ったことをもって,Xの所得分類の理由にしているとすれば,上の一般論の下に第三の判定基準をとったのかもしれない。

いや,組合契約の解釈を変えれば,この事件は組合損益の組合員への税務上の配賦(allocation)が問題になっているのではなく,単にB株の現物分配(distribution)が問題になっているのかもしれない。りんご組合事件最高裁判決のような筋の考え方である。

いろいろな潜在的論点が明示的に構造化・争点化されないまま,確定に至った事件というべきではないか。

31 January 2013

「法を行うとは、この世に正しさを実現しようということだ」

2001年に渡辺浩先生が寄せられたこの文章ほど,法学の精髄を活き活きと伝えるものを,私は未だ知らない。これをスピーチで直接にうかがう経験をもつと,「ことばがひとを鼓舞するとはこのことか」としみじみ感じ,忘れがたい。2002年のこの文章もいい。

写真

30 January 2013

韓国がオフショアパートナーシップの性質決定について立法

PWCのNewsalertによれば,次のうちひとつの要件を充たせば,外国法人として扱うらしい。
  • 韓国商法上の会社類似の法人格
  • 有限責任パートナーのみ
  • 構成員と別の名義で資産を有するか,訴訟の当事者になることができる
  • 韓国法上の法人である有限責任事業と類似した性質を有する
これに基づき,NTSが主なオフショア事業体が外国法人にあたるか否かのリストをリリースする予定という。日本法でかねてより提案されながら未だ実現できていないことが,韓国ではいち早く実現する感じ。 Hat tip: @masa_koz

http://www.bridgewaycorp.com/images/Offshore-LLC-Combo.jpg

21 January 2013

ひとはいかに自らを欺くか

標準的なモデルは,不正から得られる金額と摘発される確率が,ひとが不正行為を行なうか否かに影響するとみる。これに対し,この人気ある行動経済学者は,各種実験によりこのモデルをくつがえす。

不正を促す要因として,
  • 不正行為を正当化する能力
  • 利益相反状況(これは不正から得られる金額にカウントできるかもしれないが)
  • 創造性
  • 消耗(「朝からずーっと食べるのをガマンしてきたけれど深夜に一口ポテトチップスを食べたらもう止まらなくなった」というような状況)
  • 自分の不正が他人の利益になること
  • 他人の不正を目撃すること
などをあげる。また,不正を減らす要因として,道徳心を呼び起こすことがかなり効果的であり,試験の直前に誓約することなどをあげる。

確定申告をごまかす例も出てくるし,広く法規範に深く関係する。それだけに,すでに反響があちこちにでている。これこれこれなど。