21 December 2013

最判平成25・7・12―共有不動産持分の差押処分の取消訴訟―他の共有者の原告適格を肯定

訴訟の経緯にやや特色あり。

  • 第1審 原告適格を問題とせず、本案で請求棄却
  • 第2審 原告適格なしとして訴え却下、ただし本案についての第1審判決を補正して引用
  • 上告審 原告適格ありとしたうえで、不利益変更禁止原則により上告棄却
最高裁は、
滞納者と他の者との共有に係る不動産につき滞納者の持分が国税徴収法47条1項に基づいて差し押さえられた場合における他の共有者は、その差押処分の法的効果による権利の制限を受けるものであって、当該処分により自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者として、その差押処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たり、その取消訴訟における原告適格を有するものと解するのが相当である。
と判示。

相続税の滞納事案であり、原告が滞納者との間で相続税法34条の連帯納税義務者の関係にあることからして、原告適格を肯定する理由になりえた。しかし、最高裁はこの点には触れず、もっぱら共有との関係で理由付けを行った。ゆえに、共有者が滞納した場合であれば射程が及ぶであろう。さらに、同様の理由付けは、不動産だけでなく動産にもあてはまるのではないか。

19 December 2013

中英―新租税条約が発効

1984年条約に代わるもの。2011年6月27日に署名されていたが、このたび、2013年12月13日付けでようやく発効した。発効が遅れる間、2013年2月27日署名の議定書で配当条項が改められ、間接保有の場合を除外し直接保有の場合に限って軽減税率を適用するものとされている。英国側の条約テクストへのリンクはこれ(Chinaの項)。

ドイツ―条約交渉のためのモデル租税条約が公表されていた

事業所得条項は、OECDモデル新7条に準拠している。
8月22日にリリース、英語版はこれで、ドイツ語版がこれ

Wortbildmarke: Bundesministerium für Finanzen, Link zur Startseite

18 December 2013

日英租税条約の改定―新型事業所得条項を導入

財務省のプレス・リリースによると
12月17日(火)、日本国政府と英国政府との間で「所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約を改正する議定書」の署名がロンドンにおいて行われました。
 本改正議定書は、2006年に発効した現行条約の一部を改正するものであり、両国間の投資交流を一層促進するため、投資所得(配当及び利子)に対する源泉地国免税の対象を拡大し、事業利得に関する新たな条項を導入するとともに、租税条約上の税務紛争の解決促進のため、相互協議手続に仲裁制度を導入しています。また、徴収共助の規定を導入するなど、両国の税務当局間の協力関係が強化されています。
 とのこと。事業所得について、本支店間の内部取引を全面的に認識する。日本国の締結した二国間租税条約で、2010年OECDモデル租税条約新7条と同様の規定を、はじめて導入する例となる。条文の日本語テクストはこれ。また、英語テクストはこれ

15 December 2013

株主優待が交際費に

12月13日付の朝日新聞の報道によると
関東や東海で焼き肉店を中心に約240店舗を展開する「安楽亭(あんらくてい)」(さいたま市)が関東信越国税局税務調査を受け、2011年3月期までの4年間で約3億円の申告漏れを指摘されたことが分かった。株主に配った優待券(食事券)を広告宣伝費として処理していたが、課税対象となる交際費と指摘されたという。
 とのことである。たしかに、同社のホームページで、10月11日付で「株主優待券に係る国税不服審判所長の裁決書受領について」というプレス・リリースが出ている

記事をみた限りでは事実関係がよくわからず、いくつか疑問が生ずる。
1)なぜこの段階で、新聞報道がされたか。
2)国税不服審判所の裁決は、どういうロジックを展開したのか。
3)交際費認定以前の問題として、資本等取引に該当しないのか。

なお、所得税基本通達24-2は、次の取扱いを示している。

(配当等に含まれないもの)

24-2 法人が株主等に対してその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益であっても、法人の利益の有無にかかわらず供与することとしている次に掲げるようなもの(これらのものに代えて他の物品又は金銭の交付を受けることができることとなっている場合における当該物品又は金銭を含む。)は、法人が剰余金又は利益の処分として取り扱わない限り、配当等(法第24条第1項に規定する配当等をいう。以下同じ。)には含まれないものとする。(平19課個2-11、課資3-1、課法9-5、課審4-26改正)
(1) 旅客運送業を営む法人が自己の交通機関を利用させるために交付する株主優待乗車券等
(2) 映画、演劇等の興行業を営む法人が自己の興行場等において上映する映画の鑑賞等をさせるために交付する株主優待入場券等
(3) ホテル、旅館業等を営む法人が自己の施設を利用させるために交付する株主優待施設利用券等
(4) 法人が自己の製品等の値引販売を行うことにより供与する利益
(5) 法人が創業記念、増資記念等に際して交付する記念品
(注) 上記に掲げる配当等に含まれない経済的な利益で個人である株主等が受けるものは、法第35条第1項《雑所得》に規定する雑所得に該当し、配当控除の対象とはならない。

23 November 2013

国富論第3編第4章最終段落から引用


商人は一つの国の国民であるとは限らない(A merchant...is not necessarily the citizen of any particular country)


20 November 2013

米国―Max Baucusの国際課税討議ドラフト

2013年11月19日付けで、上院財政委員会がInternational Business Tax Reform Discussion Draftをリリース

外国子会社所得の課税繰延を廃止したうえで、次のものに置き換える案である。

  • 米国顧客への販売益はフル税率で課税
  • 外国市場に売られる製品やサービスから生ずる所得に対しては毎年ミニマム税を課税
  • 受動的で可動性の高い所得はフル税率で課税

また、税制改正による新税制への移行時に、これまで米国で課税されてこなかった外国子会社所得に対して、1回限りで20%課税を行う(8年間で分割納付)。

さらに、チェック・ザ・ボックス規則の国際的適用を廃止する案が盛り込まれるなど、BEPS Projectに対応する面もある。

今後の米国の税制改正論議に一石を投ずるものといえるが、どの程度の支持を得られるだろうか。2014年1月17日までコメントを募っている。Dan Shaviroのコメントがもう出ている

Tax Reform Option Papers

19 November 2013

米国―会社形態からの逃走

すでに1975年にワイオミング州でLLCができ、連邦租税法上そのパス・スルー取り扱いが認められたころから、きざしはあった。その後、法人段階で法人所得税を課されるいわゆる「C法人」の数は減少し、21世紀初頭にはパートナーシップの数のほうが多くなった。



しかし、このthe Economistの記事が取り上げるのは、天然資源など特定の業種だけが利用できるMLP(master limited partnership)が、上場会社に対する規制と法人所得税のいずれにも服さないため、会社という事業形式よりも好まれるようになっているという驚くべき事実である。日本語訳が
JB Pressにある。よりくわしい記事として、Rise of the distorporationがある。このdistorporationというのは聞きなれない言葉だが、会社の設立(incorporation)の逆という意味で使っているのだろう。



The Economistの処方箋は、会社に対する法人税率を下げ、上場会社に対する規制をゆるめるべし、というものである。たしかに、いずれかの事業形式が極端に有利になる状況は、改善すべきであろう。もっとも、簡単に税務上の赤字を配ることができたり、ガバナンスや開示などに関する最低限の要請をかいくぐることができたりする法形式こそ、いかにもあやしいのではないか。

11 November 2013

英国―受益者情報の登録と開示

このthe Economistの記事によると、受益者の登録が6月のG8によって支持されたのち、10月31日に英国がその公開を打ち出したという。より短い記事はこれ。Tax Justice Networkの番付も記事になっている




10 November 2013

国連モデル租税条約7条1項の影響力―さらに低下

2013年10月下旬の国連専門家会議に,IBFDの報告書が提出されていた。この報告書は,国連モデル租税条約の条項が各国の締結する租税条約にどの程度反映しているかを調査するもので,1997年と2011年の調査の延長にある。今回は,1997年から2013年に締結された租税条約2036本を対象として,若干のものを除外したうえで,5条や7条,14条などいくつかの条項の反映具合を検討した。

手堅い基礎データとして重要であるばかりでなく,いろいろ興味深い結果を得ている。たとえば,
  • 恒久的施設の定義に関する5条3項のように,40%以上の租税条約で採用されているものがあること
  • 7条1項の限定的な吸引力主義(limited force of attraction)ルールのように,15%以下の租税条約でしか採用されておらず,しかも,1997年の調査時と比べても採用率が低下したものがあること
といった結果である。後者の7条1項については,「この条項の適用の困難の結果であるかもしれない(60頁)」と述べている。このことを,帰属主義への見直しとの関係にひきつけていえば,国連モデル租税条約7条1項の存在にもかかわらず,現実の二国間租税条約締結のトレンドとしては,OECD非加盟国の条約慣行としても帰属主義がほとんどになっていることになる。

こういった事実を実証的に明らかにするのは,大変な労力を要する。調査作業をリードしたWimとJanには,「公表おめでとう」といいたい。

http://www.un.org/esa/ffd/images/header_logo.jpg

27 September 2013

最高裁の婚外子相続分違憲決定に国税庁が対応

最高裁の違憲決定が平成25年9月4日に下された。これを受けて,同年9月5日以後の相続税の取扱いとして,国税庁が次のアナウンスを行った(下線部は引用者による)。
平成25年9月4日付最高裁判所の決定(以下「違憲決定」といいます。)を受け、その趣旨を尊重し、平成25年9月5日以後、申告(期限内申告、期限後申告及び修正申告をいいます。)又は処分により相続税額を確定する場合(平成13年7月以後に開始された相続に限ります。)においては、「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1」とする民法第900条第4号ただし書前段(以下「嫡出に関する規定」といいます。)がないものとして民法第900条第4号の規定を適用した相続分に基づいて相続税額を計算します。
これは,最高裁が,民法900条4号ただし書前段の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断したことを,尊重するものである。ただし,最高裁は,平成13年7月当時から同決定までの間に開始された他の相続につき,民法900条4号ただし書前段の規定を前提としてされた遺産分割審判等の裁判,遺産分割協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼさないとしていた。このこととの関係で,次のような留意事項が付されている。
違憲決定では、嫡出に関する規定についての違憲判断が「確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものでない」旨の判示がなされていることに鑑み、平成25年9月4日以前に、申告又は処分(以下「申告等」といいます。)により相続税額が確定している場合には、嫡出に関する規定を適用した相続分に基づいて相続税額の計算を行っていたとしても、相続税額の是正はできません。また、嫡出に関する規定を適用した相続分に基づいて、相続税額の計算を行っていることのみでは、更正の請求の事由には当たりません。

14 September 2013

EU金融取引税に条約違反とのペーパー

このペーパーは

OPINION OF THE LEGAL SERVICE
Subject: Proposal for a Council Directive implementing enhanced cooperation in the area of financial transaction tax (FTT)
- Legality of the counterparty-based deemed establishment of financial institutions (Article 4(1) point f) of the proposal)

というもので,ロイターのこの記事にリンクが張ってある。 拘束力はないというが,導入を急ぐ独仏と,反対する英などの対立が,この背景にある。9月10日にいっせいに報道されていた。
BBCのサイト Bloomberg   Guardian

 

07 September 2013

G20首脳,サンクトペテルブルク・サミットで,自動的情報交換とBEPS行動計画を支持

首脳宣言のTax Annexは,ここからみることができる→財務省サイト G20サイト
これに先だって,OECD事務総長からG20首脳に対して,この報告書が提出されていた。
参考,外務省サイト 財務省サイト

22 August 2013

中国がマルチ税務行政執行共助条約の署名へ

2013年8月27日に署名式があるとのプレス・リリースがあった。
これで,G20のすべてが加わることになる。





05 August 2013

新日本法規の実務税法六法(法令)が3分冊になっていた




















3冊目は地方税。たしかにこれで国税の本法を収める1冊目は2404頁になり,かなり持ち運びやすくなった。

でも,今後どのくらいのペースで増えていくのだろう?
  • 昭和61年版は,地方税法はもちろん,租税特別措置法を含めた法令編全体で1冊,合計2478頁だった。
  • 平成15年版から租税特別措置が分かれて,2分冊になった。
  • そして今回の平成25年版で,3分冊になったのである。


16 July 2013

BEPSに関するオールト講演

1998年「有害な税の競争」報告書の産みの親であるHugh Ault教授が,BEPSに関する講演をSSRNに公表した(Tax Notes Internatonal, July 17, 2013)。1998年報告書に3つの側面(①脱税,②租税回避,③租税補助金)があったと整理したうえで(1195頁),特に②との関係でBEPSプロジェクトについて次のように観察している。

  • BEPSの対象が源泉地国と居住地国の適正な税源分配という根本問題に波及せざるを得ないこと(1199頁)
  • これまでの情報交換に関する取り組みと比較すると,BEPSはより困難な問題に取り組むことになり,その意味でOECDが荒海(much rougher water)に泳ぎだしていること(1200頁)

これはかなり正確な認識と思われる。

なお,③について足並みが揃わない現実は,ドイツのショイブレ財務大臣が英蘭などを念頭においてパテント・ボックスの禁止を呼びかけている例にもあらわれている。

11 July 2013

不動産保有税の美点と現実―The Economistの記事をめぐって

「各国政府は財産税(property taxes)をもっと利用すべきだ」というThe Economistの記事が出た。IMFのペーパーOECDの報告書などをベースにして,人々の行動をゆがめず安定した税収源であるなどの美点を列挙している。にもかかわらず,世界的にみると,必ずしも十分に利用されていないという。




その理由として,この記事は,次の点をあげている。

  • 執行に必要な情報を政府が欠くこと
  • 分配上の公正さについて説が分かれること
  • 有権者にとって顕示性のある(salientな)税であること
最後の点については,一括納税である場合には,毎月のローン支払とあわせて納税する場合よりも,人々がより非寛容になるというアメリカの例をあげている。

では,日本はどうか。市町村が固定資産税を賦課している。国際比較でどのレベルに位置づけられるかが気になった。そこで平成22年度に関する手元の数字で簡単に計算してみると,GDPは146兆6569億円,固定資産税は8兆8650億円だったから,GDP比率は6%になる。償却資産に係る部分を除き,土地・家屋の係る部分に限ると,4.9%になる。これは,上の表のHigh Incomeと記されたところを若干上回っている。英米のレベルではないとしても,結構利用しているといえるのかもしれない。

06 July 2013

東京高判平成22・9・30税資260号順号11523(不動産所得とした事例)

オーダーリースの合意解約に際して,保証金5000万円の返還義務を免除された。これが貸主個人の不動産所得にあたるとされた事例。地裁判決がこれで,高裁判決がこれ

所得分類の争点(不動産所得か一時所得か)が前面に出ているが,納税者としては一挙に課税される点が問題であり,その意味ではポイントは平準化の要否であるともいえる。ところが,平成23年12月改正前の事案であったため,平均課税に当初申告要件が課されており(当時の所得税法90条4項),それを充たしていなかった。

当初申告要件が廃止された現在の視点からみると,不動産所得とされた場合に「臨時所得(所得税法2条1項24号,所得税法施行令8条3号)」にあたるかという争点が,クローズアップされる。裁判所はこの点について判断を下していない。注目されることに,国税不服審判所の裁決は次のように述べて,「臨時所得」にあたらないとしていた。
  • 所得税法施行令第8条第3号にいう3年以上の期間の補償に該当するか否かは、一般的には同号が規定する不動産所得の補償が、業務の休止、転換又は廃止に伴い生じる逸失利益の補償であり、当該不動産貸付業務を継続していれば得られたであろう賃料相当額の補償を意味するものであることから、当該補償に係る契約等において、その算出根拠が3年以上の期間に係るものであることが示され、その内容も相当と認められるような場合を除けば、特段の事情がない限り、当該不動産貸付業務に係る3年分の収入に相当する金額の補償であるか否かをもって判定するのが相当である。すなわち、不動産貸付業務の休止等による補償には、いわゆる収益補償金のほか、経費補償金、固定資産の遊休期間中における減耗補償金や原状回復費用相当額等も含まれると考えられることから、3年以上の期間の補償に該当するか否かは、総収入金額から必要経費を控除した後の金額である不動産所得の金額によるのではなく、当該不動産貸付業務に係る収入金額によって判定するのが相当と解されるのである。
  • 本件返還不要保証金が3年以上の期間の補償に該当するかを判断すると、本件返還不要保証金については、その対象期間等の算出根拠が示されておらず、また、・・・これを一体で臨時所得該当性を判断するのが相当であるところ、本件における事情の下においては、・・・本件賃貸借契約の3年分の収入に相当するか否かをもって、臨時所得該当性を判断するのが相当である。
  • そうすると、本件返還不要保証金50,000,000円を、本件賃貸料月額の1年当たりの収入金額に相当する金額25,200,000円(2,100,000円×12月=25,200,000円)で除し、補償期間を計算すると約2年(50,000,000円÷25,200,000円1.98年2年)となるから、本件返還不要保証金は、3年以上の期間の不動産所得の補償に当たるとは認められない。

02 July 2013

税務行政執行共助条約の発効

財務省の報道発表によると,次の通り。
  • 6月28日(金)、我が国は、「租税に関する相互行政支援に関する条約」(略称「税務行政執行共助条約」)及び「租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書」の受諾書を経済協力開発機構(OECD)の事務総長に寄託しました。
  • これにより、本条約は、我が国について、本年10月1日(受諾書を寄託者に寄託した日の後3か月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日)に発効することとなります。

24 May 2013

Appleのオフショア利益移転

米国上院で2013年5月,Apple社のTim Cookを含むwitness panelのヒアリングがあった。2012年9月には,MicrosoftとHewlett-Packardが対象となっていた。

The United States Capitol

18 May 2013

五月祭

今年ももりだくさんの企画だ。

めいちゃん

17 May 2013

東京高判平成23・9・21訟務月報58・6・2513(未分割遺産売却による譲渡所得の帰属)

事実関係は大略次のとおり。
  • 昭和53年に相続が開始
  • 遺産分割協議が整わず,調停を申し立て,審判に移行
  • 平成16年に家裁が遺産である本件土地の競売を命ずる中間処分(家事審判法15条の4)
  • 平成18年にこれに基づき競売による売却
  • 平成19年に終局審判でAは遺産を取得しないこととされる(遺贈による特別受益を受けていたため)。
東京高裁は,本件土地の売却に係る譲渡所得はAに対して法定相続分の割合により帰属するとした。Aは売却代金を受け取らないにもかかわらず,譲渡所得ありとされることになる。

いったん法定相続分に従って所得税額を共同相続人間に割り付けても,のちの家事審判で所得税負担の均衡を考慮して遺産を分けることで,問題は調整できるようにも見える。しかし,法定相続分に応じた割り付けが正しいという前提にたつ限りは,このような再調整を家裁に期待することは難しいであろう。金子宏・租税法(第18版)767頁は,再調整のやり方として,Aは後発的理由による更正の請求ができると解している。

19 April 2013

国外財産調書関係の取扱い

平成25年度税制改正で,国外財産調書制度の適用範囲に修正が加えられた。
  •  国外財産調書制度について、対象となる国外財産に国外にある金融機関の営業所等に設けられた口座において管理されている国内有価証券(国内法人等が発行した株式、公社債その他の有価証券をいう。)を加える
  • 対象となる国外財産から国内にある金融機関の営業所等に設けられた口座において管理されている外国有価証券(外国法人等が発行した株式、公社債その他の有価証券をいう。)を除外する
  • (注)上記の改正は、平成26年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用する。
そして,3月29日付けで,国税庁の通達が出ていた

11 April 2013

Obama大統領の2014年度予算教書

大統領予算教書が議会に提出された。いわゆるGreen Book(正式名称はGeneral Explanations of the Administration’s Fiscal Year 2014 Revenue Proposals)は分厚い。国際課税に限っても,利子費用控除の繰延や無形資産に係る課税強化など,注目すべき項目を含んでいる。

【国際所得課税の改正案の目次】
REFORM U.S. INTERNATIONAL TAX SYSTEM........................................................... 46
Defer Deduction of Interest Expense Related to Deferred Income of Foreign
Subsidiaries........................................................................................................... 46
Determine the Foreign Tax Credit on a Pooling Basis .................................................... 48
Tax Currently Excess Returns Associated with Transfers of Intangibles Offshore .......... 49
Limit Shifting of Income Through Intangible Property Transfers .................................... 51
Disallow the Deduction for Non-Taxed Reinsurance Premiums Paid to Affiliates.......... 52
Limit Earnings Stripping By Expatriated Entities ............................................................ 53
Modify Tax Rules for Dual Capacity Taxpayers............................................................... 55
Tax Gain from the Sale of a Partnership Interest on Look-Through Basis ...................... 57
Prevent Use of Leveraged Distributions from Related Foreign Corporations to Avoid
Dividend Treatment .............................................................................................. 59
Extend Section 338(h)(16) to Certain Asset Acquisitions................................................. 60
Remove Foreign Taxes From a Section 902 Corporation’s Foreign Tax Pool When
Earnings Are Eliminated....................................................................................... 61

09 April 2013

オフショア金融センターとしてのキプロス

租税条約ネットワークを利用して持株会社を置いていたというのがthe Economistのこの記事。キプロスと二国間租税条約を締結した国は,1998年以来のロシアを含め,確かに多かった。
CYPRUS; ADEN
CYPRUS; ANGUILLA
CYPRUS; ANTIGUA
CYPRUS; ARMENIA
CYPRUS; ARUBA
CYPRUS; AUSTRALIA
CYPRUS; AUSTRIA
CYPRUS; BARBADOS
CYPRUS; BELARUS
CYPRUS; BELGIUM
CYPRUS; BRITISH HONDURAS
CYPRUS; BRITISH VIRGIN ISLANDS
CYPRUS; BULGARIA
CYPRUS; CANADA
CYPRUS; CAYMAN ISLANDS
CYPRUS; CEYLON
CYPRUS; CHINA
CYPRUS; CYPRUS
CYPRUS; CZECH REPUBLIC
CYPRUS; CZECHOSLOVAKIA
CYPRUS; DENMARK
CYPRUS; DOMINICA
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CYPRUS; ESTONIA
CYPRUS; EUROPEAN UNION
CYPRUS; FALKLAND ISLANDS
CYPRUS; FINLAND
CYPRUS; FRANCE
CYPRUS; G.D.R.
CYPRUS; GAMBIA
CYPRUS; GERMANY
CYPRUS; GOLD COAST
CYPRUS; GREECE
CYPRUS; GRENADA
CYPRUS; GUERNSEY
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CYPRUS; INDIA
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CYPRUS; IRELAND
CYPRUS; ISLE OF MAN
CYPRUS; ITALY
CYPRUS; JAMAICA
CYPRUS; JERSEY
CYPRUS; KENYA
CYPRUS; KUWAIT
CYPRUS; LATVIA
CYPRUS; LEAGUE OF NATIONS
CYPRUS; LEBANON
CYPRUS; LITHUANIA
CYPRUS; LUXEMBOURG
CYPRUS; MALAYA
CYPRUS; MALTA
CYPRUS; MAURITIUS
CYPRUS; MOLDOVA
CYPRUS; MONTSERRAT
CYPRUS; NETHERLANDS
CYPRUS; NETHERLANDS ANTILLES
CYPRUS; NEW ZEALAND
CYPRUS; NEWFOUNDLAND
CYPRUS; NIGERIA
CYPRUS; NORTHERN RHODESIA
CYPRUS; NORWAY
CYPRUS; NYASALAND
CYPRUS; P.R.C.
CYPRUS; PALESTINE
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CYPRUS; POLAND
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CYPRUS; RHODESIA AND NYASALAND
CYPRUS; ROMANIA
CYPRUS; RUSSIA
CYPRUS; SAN MARINO
CYPRUS; SEYCHELLES
CYPRUS; SIERRA LEONE
CYPRUS; SINGAPORE
CYPRUS; SLOVAKIA
CYPRUS; SLOVENIA
CYPRUS; SOUTH AFRICA
CYPRUS; SOUTHERN RHODESIA
CYPRUS; SOVIET UNION
CYPRUS; SPAIN
CYPRUS; SRI LANKA
CYPRUS; ST. KITTS AND NEVIS
CYPRUS; ST. LUCIA
CYPRUS; ST. VINCENT AND THE GRENADINES
CYPRUS; SWEDEN
CYPRUS; SWITZERLAND
CYPRUS; SYRIA
CYPRUS; TANGANYIKA
CYPRUS; THAILAND
CYPRUS; TRINIDAD
CYPRUS; TRINIDAD AND TOBAGO
CYPRUS; TURKEY
CYPRUS; TURKS AND CAICOS ISLANDS
CYPRUS; UGANDA
CYPRUS; UKRAINE
CYPRUS; UNITED ARAB EMIRATES
CYPRUS; UNITED KINGDOM
CYPRUS; UNITED STATES
CYPRUS; YUGOSLAVIA
CYPRUS; ZANZIBAR





02 April 2013

租税法の中のproperty rulesとliability rules

租税優遇措置を利用できる地位(資格)の剥奪が,property ruleとして分析できるとは,思いもよらなかった。この点を指摘しているのがこの論文。日本でいえば,青色申告の承認取消などをイメージすればよさそうだ。著者はundergraduateで数学をやっていた人だという。