17 June 2015

最判平成27年5月26日 住民税の賦課決定の期間制限

この判決が、地方住民税の賦課決定ができる期間制限について、新たな判断を示していた。

個人住民税所得割は、国税としての所得税に準拠しており、前年の所得を対象として課されることになっている。そのため、所得税のほうで変動が生ずると、住民税にも影響が及ぶ。

この事件では、飯塚市長が住民税所得割を増加する賦課決定をした。そこに至る経過は、おおむね次のようなものだった。
  • 平成16年分から平成18年分までの住民税(地方税)が問題
  • 平成15年分から平成17年分までの所得税(国税)につき、納税者が確定申告
  • 平成19年3月14日 所得税につき、飯塚税務署長が更正
  • 平成20年4月22日 国税不服審判所の裁決(更正を一部取消)
  • 平成21年10月6日 前訴判決(納税者の請求を棄却)
その後、平成22年8月23日に、飯塚市長が賦課決定をしたわけである。法定納期限から3年が過ぎていたし、上記の更正からみても2年がすぎていた。しかし、前訴判決からは2年以内だった。

最高裁は次の解釈を示したうえで、飯塚市長の賦課決定が期間制限後にされたもので違法であるとした。
個人の道府県民税及び市町村民税の所得割の課税標準は,前年の所得について算定した総所得金額,退職所得金額及び山林所得金額とされ(地方税法32条1項,313条1項),これらの総所得金額,退職所得金額及び山林所得金額は,原則として所得税法における計算の例によって算定するものとされ(同法32条2項,313条2項),所得税の課税標準(所得税法22条1項)を基準としていることから,所得税の課税標準に異動があったときは,その異動した結果に従って個人の道府県民税及び市町村民税の所得割を増減させる賦課決定をすべきこととなる。しかるところ,所得税の課税標準に異動を生じさせる処分や裁決等が地方税法17条の5の規定に定める期間を経過した後にされることもあり得ることから,同法17条の6第3項は,課税の適正を期するため,上記の所得税の課税標準に異動を生じさせる処分や裁決等がされる一定の場合においてすべきこととなる個人の道府県民税及び市町村民税の所得割を増減させる賦課決定について,それぞれの場合につき定められた一定の日の翌日から起算して2年間においてもすることができる旨を定めたものであると解するのが相当である。
したがって,個人の道府県民税及び市町村民税の所得割に係る賦課決定の期間制限につき,その特例を定める同項3号にいう所得税に係る不服申立て又は訴えについての決定,裁決又は判決があった場合とは,当該不服申立て又は訴えについてその対象となる所得税の課税標準に異動を生じさせ,その異動した結果に従って個人の道府県民税及び市町村民税の所得割を増減させる賦課決定をすべき必要を生じさせる決定,裁決又は判決があった場合をいうものと解するのが相当である。

下線を付したところを本件にあてはめると、前訴判決は「当該不服申立て又は訴えについてその対象となる所得税の課税標準に異動を生じさせ」るものではない。だから、前訴判決を起点として期間制限の特例2年をカウントすることはできず、飯塚市長の賦課決定は期間制限にひっかかるということになる。

今後、住民税の執行にあたる地方自治体としては、まず税務署が所得税の更正をしたらそこから2年内に賦課決定をし、その後納税者が所得税を争って課税標準に異動が生じたらその都度異動後の状態にあわせて賦課決定をしていく、という対応が必要になりそうである。

No comments:

Post a Comment

Comments may be moderated for posts older than 7 days.