25 November 2024

APA部門で日本が一位受賞

OECDのTax certainty day 2024で、2023 MAP & APA Awardsとして、6つの部門についてランキングを発表していた。その第6部門がCategory 6 – APA Award for Focus on Dispute Resolution。移転価格相互協議事案に占めるAPAの割合が最も高かったのが日本(84.7%)であるとのことで、一位とされている。

これは、事前確認による紛争予防のための取組みがすすんでいる、という評価と思われる。第6部門は新設という。従来の傾向も国際比較軸でみる必要がありそう。もし日本の高い数字が従来から継続して国際的にダントツの数字だったとすれば、紛争処理や法遵守に関する日本法のヨリ深い実態が表出した一例ということになるのかもしれない。あまり報道されていないので、ここにポストすることにした。

以下引用*********

Category 6 – APA Award for Focus on Dispute Resolution

Methodology: Highest proportion of APA cases compared to transfer pricing MAP cases****

Type of cases: APA cases declared in the 2023 APA Statistics and transfer pricing cases MAP cases, received before or after 1 January 2016 (or 1 January of the year of joining the BEPS Inclusive Framework)

Size: Jurisdictions with more than 20 MAP and APA cases closed or granted and in 2023 end inventory

Winner: Japan with approximately 84.7% of its transfer pricing caseload being composed of APA cases.

*********引用終わり

20 November 2024

Baer et al. (2023) Taxing Cryptocurrencies

 【この投稿の趣旨】

暗号資産の課税について、見通しの良いレビュー論文をゼミで会読した。Katherine Baer, Ruud De Mooij, Shafik Hebous, Michael Keen, Taxing cryptocurrencies, Oxford Review of Economic Policy, Volume 39, Issue 3, Autumn 2023, Pages 478–497, https://doi.org/10.1093/oxrep/grad035

本論文の著者は、IMFで長い経験を有する4名のエコノミスト。長所として、暗号資産の中でも特にどのタイプのものが問題になるかを見極めたうえで、基本構造に関わる論点とヨリ実際的な論点を腑分けしている。また、租税制度の実体的設計だけでなく、税務執行こそが大事な問題であることを強調している点は、おおいに共感できる。

そこで、このブログで本論文の概要を紹介し、暗号資産課税に関心を有する日本の読者にご覧いただきたいと考えた。

【本論文の構成】

I. Introduction

II. Context

III. Cryptocurrencies and tax design

IV. Evasion and revenue potential

V. The heart of the matter: implementation

VI. Conclusion

すなわち、Ⅱで本論文が対象とする「暗号通貨 (cryptocurrencies) 」を定義して、その性質や規模などを説明する。Ⅲで所得課税や付加価値税など、実体的な租税制度上の課題を指摘する。Ⅳで脱税と税収力の推計を示し、Ⅴで「問題の核心」と題して執行上の課題が暗号通貨特有の匿名性(取引内容は透明だが誰が取引主体であるかがわからない)にあることを指摘する。

【本論文の概要】

Ⅱで、暗号資産の中でも、TetherやBitcoinのような「暗号通貨(cryptocurrencies)」こそが、投資機能と決済機能を兼ね備え、民間で発行されるものであって、課税の基本コンセプトに関わる問題があると喝破する。

  • これに対し、NFTsのようなsecurity tokensは通常資産のデジタル表象であって投資資産として扱えばよいし、CBDCs(中央銀行デジタル通貨)はデジタル形式の不換通貨であって通貨として扱えばよいとして、検討対象から省いている。
  • 上記と区別された「暗号通貨」について、価格変動の乱高下を繰り返している事実を指摘したうえで、①取引主体がわからないこと、②取引内容が透明で公開されること、③領域を超えていること、という3つの特徴を示す。そのうえで、暗号通貨の取引形態を述べ、富裕層に保有が集中しているという推計を示す。

Ⅲは、実体的な税制設計上の課題について述べる。

  • 所得課税について、株式や社債のような資産として扱うのか、それとも、(外国)通貨として扱うのか、という根本問題があるという。これによって、たとえば、キャピタルゲインとして課税するか否かといった点が変わってくる。
  • 付加価値税の核心構造については大きな困難がないとしつつ、価格変動・租税逋脱・越境取引といった実際上の困難があること、マイナー(miners)の受け取る報酬について明確な指針が必要であること、を指摘する。
  • 外部性との関係では、暗号通貨が金融政策や外為措置の効果を減ずることに対処するための金融取引税類似の課税と、暗号通貨PoWが膨大なエネルギー消費を必要とすることから環境負荷を減ずるための炭素税に、言及する。

Ⅳは、脱税と税収力に関する文献レビューである。

  • 暗号通貨は脱税よりもそれ以外のハードコアな犯罪との関係での推計のほうが比較的に知られているとする。
  • これに対し、脱税については、①脱税の経済モデル(Allingham and Sandmo (1972))において、現金と比べた暗号通貨の取引コスト、価格変動の大きさによるリスク、という考慮要素があるとする。②暗号通貨を用いた脱税の規模については、ほとんど証拠がないとする。③暗号通貨取引に係る納税の推計をいくつか挙げている。
  • 税収力については、紹介を省略。

Ⅴは、問題の核心が実装(implementation)にあるとする。その意味するところはⅣの指摘の延長で、要するに、税務執行こそが問題の核心であるということである。

  • 匿名性(anonymity)が問題だ。かつて、課税当局の問題は、「あなたが誰かは知っているが、あなたの取引は知らない」だった。しかし、暗号通貨については、「あなたの取引は知っているが、あなたが誰かを知らない」という問題がある。つまり、取引の同定よりも、取引を特定の主体に結びつけることに困難がある、というのである。
  • それでは、課税当局は偽名使用(pseudonymity)にどう対処するか。マネロン規制(AML)上の本人確認の利用が考えられるが、AML情報だけでは課税目的には十分ではない。OECDは暗号通貨について国際的情報交換の枠組み(CARF)を設けるが、分散型取引所(DEX)を実効的にカバーできるか問題で、peer-to-peer取引は対象外。
  • 付加価値税との関係では、暗号通貨を用いて消費者に対する最終売上を過少申告するリスクや、逋脱への利用が問題。

【増井のコメント】

以上みてきたように、本論文は、手際よく既存文献をレビューし、明確な見通しを与える。分量も適度である。もっとも、ほめているだけでは「増井は批判的読解ができているのか」とお𠮟りを受けそうなので、いくつかコメントしておこう。

  • 暗号通貨の実態に関するハードな証拠は、このレビューを見る限り、まだそれほど集まっていないようである。Ⅳで紹介されている推計にはかなりのブレがあるし、これから暗号通貨がどの程度・どのように使われていくかによって変化していくだろう。本論文がmoving targetを追いかけていることに注意が必要である。
  • 本論文は、security tokensとCBDCsについては、自覚的に考察の対象外とする。それによって暗号通貨特有の「投資と決済の二面性」という中心課題があぶり出されている。他方で、NFTsやCBDCsについてもそれ自体として課税問題があるわけで、別途、実態解明と論点整理のレビューがほしい。
  • 付加価値税に関する記述には展開の余地があるかもしれない。本論文は、Ⅲ(ii)で、バーター取引を念頭において、付加価値税では、供給(日本流にいえば「課税資産の譲渡等」)が法定通貨でなく「対価(consideration)」との関係で表現されており、暗号通貨がこの「対価」に当たる、という理由によって、税制の核心構造については大きな問題がないとしている。しかしこのこと自体は、日本の所得税法の収入金額に関する規定を考えると、所得課税でも同様ではないか。また、この部分で言及している実際上の諸々の困難は、結局、あとのⅤのところで執行上の問題として再燃しており、これこそがまさに「問題の核心」なのではないか。
  • 偽名使用への対処策が発展途上である。これからどうしていけばよいか。工夫のしどころである。将来のことは鬼が笑う話だが、消費者が財やサービスを購入するときに暗号通貨を決済手段として用いることが一般化すると仮定しよう。もしそのようになれば、匿名性の問題に対処できなければ、付加価値税の執行は大きなリスクにさらされるであろう。
  • 本論文が指摘していない執行面の論点として、租税徴収の問題がある(ゼミ生の指摘による)。差押え→換価→配当という国税徴収法の伝統的な仕組みが、匿名性があり、国境を超え、価格変動の激しい暗号通貨にどうフィットするか。

【文献に関する注記】

なお、本論文は、Oxford Review of Economic PolicyのTaxing the rich (more)という特集の一部である。特集の全体は次の4部構成であり、この中で、Part Iに配置されているのが本論文であった、というわけ。

Part I: How are the rich taxed now?

Part II: How do the rich react to attempts to tax them more?

Part III: Reforms to tax the rich more

Part IV: Legal and political hurdles to taxing the rich more

11 November 2024

少額輸入貨物とVAT

OECDのConsumption Tax Trends 2022は、その2.8.2. Addressing the challenge of VAT collection on imports of “low-value” goodsにおいて、少額輸入貨物の付加価値税上の扱いについて、大要次の点を指摘している。

  • 最近まで、各国のVATは、少額輸入貨物について免税基準額を設定していた。
  • しかし、経済のデジタル化とともにその問題が認識され、2015年BEPS行動1報告書において、税収保護・競争条件確保と、徴収コストとの間の兼ね合いが必要だと指摘された。(OECD, 2015[25])
  • 続いて、2つの報告書が出た。すなわち、 “Mechanisms for the effective collection of VAT/GST”OECD, 2017[20]) 及び “The role of digital platforms in the collection of VAT/GST on online sales” (OECD, 2019[21])である。
  • AUとNZの例
  • EUの例“VAT e-commerce package”(European Commission, 2017[26])
  • OECD加盟国で免税扱いをしているのは次の9か国。9 OECD countries still exempt the importation of low-value goods from VAT with widely varying exemption thresholds, i.e. Canada (USD 16), Chile (USD 30), Colombia (USD 200), Costa Rica (USD 500), Iceland (USD 13), Israel (USD 75), Japan (100), Korea (150), and Mexico (USD 50)

この報告書は2年に一度更新されるから、おそらくもうじき、2024年版が公表される。この2年間でOECD加盟国における税制改革の方向がどう進んだかが、注目される。

12 October 2024

来週、国連で国際課税会合

29th Session of the Committee of Experts on International Cooperation in Tax Mattersの議事概要と配布資料が、ここにアップされている。対象を限定しないサービス課税条項など、すでにLinkedInなどで多くの方が注目している。遅ればせながらの備忘録になってしまうが、以下に資料へのリンク先をコピペしておく。

諸富・宮本・篠田編著『デジタル時代の税制改革』

諸富・宮本・篠田編著『デジタル時代の税制改革』は、「100年ぶりの国際課税改革の分析」という副題のとおり、2つの柱を中心として近年の改革の意義と限界を論ずる論文集。

財政学者と租税法学者の共同研究の成果。序章と第8章が全体像、第1章から第3章が2つの柱に関する検討、第4章と第5章が米国との関係、第6章がEUとの関係、第7章がGloBE情報申告書。一読して、次の点がとくに印象に残る。

  • Pillar One多国間条約が発効しなくても新ルールが今後つねに参照されることになるという認識
  • GloBEが課税ベースに会計の数値を利用するものであるため会計基準ショッピングや会計基準間の競争が生ずること
  • 2017年米国GILTI創設が国際交渉におけるフォーカルポイントを作り出して合意を成立しやすくしたこと
  • ドイツのGloBE受容がCFC税制の相当の改変を伴っていること
  • GloBE情報申告書をCbCRとの比較でみていくという視点
  • 途上国の視点
さらに時間をかけて読んでみたい。この論文この紹介とも密接に関連する。

以下に目次をコピペしておこう。

序 章 新しい国際課税ルールの内容,その意義,直面する課題,そして税収効果(諸富 徹)

第1章 経済のデジタル化と「市場国」への課税権配分を巡る論理の変遷(篠田 剛)

第2章 利益Aに係るデジタル課税の意義と課題──移転価格税制の経験を踏まえて(江波戸順史)

第3章 グローバル・ミニマム課税における所得合算ルール(IIR)──税法と会計の関係(中嶋美樹子)

第4章 TCJA2017におけるアメリカ法人税の国際課税方式の変更に関する議論とその影響(吉弘憲介)

第5章 グローバルタックスガバナンスへのアメリカのパワーの影響──「BEPS2.0」第2の柱を素材として(松田有加)

第6章 EUにおけるGloBEルールの受容──ドイツでの国内法制化を中心に(辻 美枝)

第7章 BEPS2.0第2の柱におけるGloBE情報申告書の意義と手続保障(金山知明)

第8章 経済のデジタル化に伴う国際課税の動向と課題(宮本十至子)



19 September 2024

ローマからのレシピ助言

1.消費税法の定める「課税の対象」の中核部分は、「国内において事業者が行った資産の譲渡等」だ(消費税法4条1項)。ここに「国内」とは、消費税法の施行地をいう(2条1項1号)。だから、東京都文京区本郷のピザ屋が近所で行うピザの宅配は、「国内において」行われたといえるだろう。また、ローマのピザ屋が近所で行うピザの宅配は、「国内において」行われたとはいえないだろう。ここまでは常識の範囲内で結論が出る。

2.それでは、ローマ在住の料理カウンセラーが本郷のピザ屋店員に対して、電話相談でレシピの助言を継続的に行っていたら、「国内において」行われたといえるだろうか。これはかなりややこしい。

3.内外判定については、消費税法4条3項が、次のように定める。

資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。ただし、第三号に掲げる場合において、同号に定める場所がないときは、当該資産の譲渡等は国内以外の地域で行われたものとする。

一 資産の譲渡又は貸付けである場合 当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所(当該資産が船舶、航空機、鉱業権、特許権、著作権、国債証券、株券その他の資産でその所在していた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)

二 役務の提供である場合(次号に掲げる場合を除く。) 当該役務の提供が行われた場所(当該役務の提供が国際運輸、国際通信その他の役務の提供で当該役務の提供が行われた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)

三 電気通信利用役務の提供である場合 当該電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所(現在まで引き続いて一年以上居住する場所をいう。)又は本店若しくは主たる事務所の所在地

4.まず迷うのは2号と3号のいずれを適用するかである。これは、3号の「電気通信利用役務の提供」である場合にあたるであろう。というのも、「電気通信利用役務の提供」は、消費税法2条1項8号の3で、次のように定義されているからである(下線は引用者による)。

電気通信利用役務の提供 資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物(著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第一号(定義)に規定する著作物をいう。)の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含む。)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(電話、電信その他の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供を除く。)であつて、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいう。

このあてはめは、消費税法基本通達5-8-3(6)からも確認できよう。

そうなると、レシピ助言サービスを受ける者が日本国内にいるから、「国内において行われた」場合にあたる、といって差支えないように思われる。もっとも厳密にいうと、この結論に至るためには、ピザ屋店員の住所というよりはむしろピザ屋本店の所在地を基準として考えることになりそうで、そうなると、このピザ屋が個人事業なのか株式会社なのかといったことも事実認定する必要があるのだが・・・。ややこしい。

5.以上で、「国内において」という要件についての話はとりあえずおしまい。しかし念のため、課税関係がどうなるかについて補足してみよう(やぶへびになりそうだが・・・)。上記2の電話助言は、個別契約でピザ屋事業者が事業として利用することが定められているような場合には、おそらく「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するだろう(消費税法2条1項8号の4、消費税法基本通達5-8-4)。そうなると、リバース・チャージ方式による役務受領者納税の出番となる。ただしここでも話はさらに込み入っていて、課税売上割合が95%以上である課税期間においては、当分の間はリバース・チャージ方式の適用がない(平成27年改正消費税法附則42)。こういった点について詳しくは、伴忠彦・海外取引の消費税実務のとらえ方(2024)が頼りになる。この本の69頁を読んで、こんなことになっているのか、とようやく気が付いた。佐藤英明=西山由美・スタンダード消費税法(2022)176頁、国税庁のタックスアンサーも参照。うーん、ますますややこしい。

相続による財産取得と所得税

夏の集中講義で、いい質問があった。質問「日本においては相続、遺贈又は贈与により取得する財産は所得税法上非課税とされていますが、相続税がない国においては、相続により取得した財産に対して、相続した個人の所得として所得税を課税するのでしょうか?」

はて。どう答えるのがいいだろうか。次のような答えを考えてみた。

日本法は課税所得の範囲を包括的に構成しているので、所得税法に特段の非課税規定がなければ、当然に課税所得に含まれる(一時所得となる)。このことから、他の国でも同じではないか、とうっかり考えてしまいがちだ。ところがどっこい、各国の立法例は一筋縄では説明できない。

このことを、連邦レベルの遺産税が廃止されているカナダやオーストラリアの例で考えてみよう。

まず、この両国は、財産を取得する者の側の所得税の考え方が日本と異なり、「源泉(source)」から生ずる所得を制限的に課税対象に含める、という考え方だ。そこで、両国ともに、私的贈与(事業に関係しない贈与)は、贈与を受ける人にとっては「源泉」から生ずるものではないために非課税となり、贈与を行う人にとっては控除しない、という取扱いとなる(Ault et al. Comparative Income Taxation: A Structural Analysis (4th edition, 2019) 300)。遺産の相続についても、同様の考え方で、受け取ったからといって当然に個人の所得として所得税を課すわけではない。

さらに、以上に加えて、含み損益を抱える財産の扱いが問題になる。そしてこの点については、カナダとオーストラリアで扱いが異なる(Ault et al.同上同頁)。

  • カナダでは、資本財産の生前移転と死亡移転のいずれについても、移転者にとって所得の実現と扱われ、移転時の時価に相当する収入があったものとされ、被移転者にとって財産の取得価額が移転時の時価とされる。ただし、配偶者間の移転については例外がある。これを日本流にいえば、生前贈与と相続のいずれについても原則として所得税法59条1項のみなし譲渡の規定が適用されるようなイメージ。
  • オーストラリアでは、生前贈与は実現事象であり時価課税をもたらすが、相続の場合は含み損益課税が繰り延べられて相続人が取得費を引き継ぐ。後者を日本流にいえば、所得税法60条1項による取得費引継ぎのようなイメージ。

両国でこのような扱いになった経緯は、興味深い。いずれも連邦制をとる国であり、州間競争があったことなど、この間の経緯に関する良い研究が、一高龍司「カナダ及びオーストラリアにおける遺産・相続税の廃止と死亡時譲渡所得課税制度」日税研論集56号(2004年)45頁。これは最近の論文だと思っていたが、じっさいには公表後もう20年もたっていた!

さて。こんな答え方で、質問した方は納得していただけただろうか?もうすこし別の角度からの答え方としては、増井良啓・租税法入門第3版Chapter 21(所得税と相続)もあわせてご覧いただければうれしい。

16 September 2024

Tax administration is tax policy.

税務行政は租税政策そのものである、という趣旨で、

Tax administration is tax policy.

といわれることがある。この印象的なフレーズの原典は、世銀のこの本だ。すなわち、(シャウプ勧告で有名なあの)シャウプ博士を含む編者が、『途上国における付加価値税(Value Added Taxation in Developing Countries)』と題する書物を1990年に公表し、その中で、IMFのMilka Casanegra de Jantscherさんが、「付加価値税を執行する(Administering the VAT)」という論文を寄せた。その179頁右の箇所に、このフレーズが出てくる。引用する(イタリックは原文のまま、ボールド体は引用者による)。

My sole purpose is to point out that the broad-based and neutral tax discussed in public finance treatises is very different from the VAT that prevails in most developing countries and that administrative constraints are the main cause of this difference. Experience with the VAT shows, once more, that in developing countries tax administration is tax policy.

(仮訳)私の唯一の目的は、財政学の論文で議論されている課税ベースが広くかつ中立的な租税は、ほとんどの発展途上国で普及している付加価値税とは非常に異なっており、この違いの主な原因は行政上の制約であることを指摘することだ。付加価値税の経験は、発展途上国では税務行政租税政策そのものであることを改めて示しているのである。

この引用から明らかなように、もともとの文脈としては、途上国のVATの経験に照らし「途上国においては」そうだ、という意味であった。これがのちに限定を付さない形で、広く引用されるようになったのだろう。1992年のこの論文では、Milka Casanegra de Jantscher自身が、VATに限定せず「途上国においては」真の意味で税務行政は租税政策そのものであると述べていた。その後、Rihard M. Bird教授は、2004年の Administrative dimensions of tax reform, Asia-Pacific Tax Bulletin, Vol.10, No.3でも、その脚注5で上記1990年の論文を引用しつつ、より一般的に次のように述べている。

In a very real sense, “tax administration is tax policy”. Maximizing revenue for a given administrative outlay is only one dimension of the task of tax administration. Revenue outcomes may not always be the most appropriate basis for assessing administrative performance. How revenue is raised, i.e. the effect of revenue generation effort on equity, the political fortunes of the government, and the level of economic welfare, may be equally (or more) important as how much revenue is raised.

(仮訳) 真の意味で「税務行政は租税政策そのものである」。与えられた行政支出に対する歳入の最大化は、税務行政の任務の一側面にすぎない。歳入アウトカムは、行政業績を評価するための最適基準であるわけでは必ずしもない。歳入がどのように得られるか、すなわち、歳入創出努力が公平性、政府の政治的運命、経済厚生水準に与える影響は、どれだけの歳入が得られるかと同じくらい (あるいはそれ以上に) 重要である。

つまり、Bird教授によると、途上国のVATという元々の文脈を超えて、より普遍的な意味において、税務行政が租税政策そのものだ、というのである。そして、その内容として、歳入に劣らず公平・政治・経済厚生を考えなければならない、という点が敷衍される。なお、Bird教授には同タイトルでこの論文が2014年にあり、そのままリンク先で読めるが、引用してあるフレーズではisがイタリックになっていない(編集の都合だろうか)。

ところで、この"Tax administration is tax policy."というフレーズには、ぼく自身にも個人的な記憶がある。1990年代あたまに米国留学したころ、Milkaさんが大学のクラスにいらっしゃったのだったか、Washington DCへの見学旅行でお目にかかったのだったか、いずれだったかは忘れてしまったが、直に接する彼女の肉声がその大人風の物腰とともに、きわめて迫力に満ちていた。そのときの正確な発言が"tax administration is tax policy"だったか、はたまた"tax policy is tax administration"だったかは、いまとなってはぼくの記憶があいまいだ。文章に残っているところからすると、おそらく彼女の「決め文句」は前者だったのだろう。

30 August 2024

いま、法学を知りたい君へ

 いま、法学を知りたい君へ -- 世界をひろげる13講 が公刊される。文系理系を問わず学部1年生2年生を対象としたオムニバス講義を記録したもの。

私の第12講「租税競争をくいとめる」は、国際課税の分野における2021年10月合意のPillar Twoをめぐって、それが抱える課題を簡潔に論じた。講義の終わりに「お題」を提示して、グローバルなフォーラムと日本の国会との関係をズバリ直球で問うた。これに対してある理系の方がとてもいい応答を提出してくれた。2年も前のことなのに記憶に新しい。

大教室で講義をしたのはGW中だった。授業の後、白石忠志教授とご一緒に、人でにぎわう渋谷に出て、おいしい蕎麦を食べた。私にとって大切な想い出。執筆者紹介にも記した。

目次をコピペしておこう。

第1講 ロシアのウクライナ侵略と国際法(中谷和弘)

第2講 法を通じて世界を見る(巽智彦)

第3講 国会のオンライン審議は可能か(宍戸常寿)

第4講 18歳,19歳の者は大人か?子どもか?(成瀬剛)

第5講 多様化する働き方と社会法(笠木映里)

第6講 母子関係の比較法──外国法の参照は無意味か?(齋藤哲志)

第7講 会社はSDGsのために存在するのか?(松井智予)

第8講 なぜデッド・コピー(酷似的模倣)を禁止しなければいけないのか?(田村善之)

第9講 自動運転と法・その1──総論 (藤田友敬)

第10講 自動運転と法・その2──自動運転車による交通事故と民事責任・刑事責任(後藤元)

第11講 大きいことは悪なのか?競争法は巨大企業にどう対処するか(Simon VANDE WALLE)

第12講 租税競争をくいとめる(増井良啓)

第13講 競争法の国際的適用(白石忠志)

なお、下の画像には帯がついているが、この帯を取り外しても、ろけっとぽっぽーが装丁カバーに顔を出している。前著のときにはなかった新機軸。



26 August 2024

中里古希祝賀論文集

市場・国家と法 -- 中里実先生古稀祝賀論文集が公刊された。租税法の基礎理論、租税法の実践的展開、租税法と公法、租税法とビジネスロー、古希をお祝いして、の5部構成。以下に目次をコピペする。

目次

租税法の基礎理論

最小国家における租税と貨幣 ……………………………………………………渡辺智之

所得の発生と通貨…………………………………………………………………藤岡祐治

所得と自由──ベルクソンからフィッシャーへ……………………………………岡村忠生

租税法と経済学と神経科学──Law, Economics and Neuroscience…………神山弘行

準自発的コンプライアンスについて………………………………………………増井良啓

制定法解釈における議会議事録の参照──イギリスのPepper v. Hart判決の分析…吉村典久

経営判断原則と租税法判断──租税回避否認要件に係る経済的合理性基準の研究…谷口勢津夫

租税法が企業の価格決定に介入することの限界について …………………藤原健太郎

Andreas Kallergis『課税管轄権』を読む……………………………………田中啓之

外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)の趣旨とその解釈のあり方…長戸貴之

政府系ファンドへの課税問題──国際法の観点から……………………………………中谷和弘

租税法の実践的展開

信託型ストック・オプションに関する租税法上の解釈問題……………………………渡辺徹也

受益証券発行信託型STO・PTS取引に対する適正な課税方法 ──特に不動産セキュリティ・トークンを素材として……………………………………………岩﨑政明

租税属性の移転可能性をめぐる議論──税額控除の給付・移転の広がりを素材に …吉村政穂

企業ファイナンスへの課税の影響Ⅱ……………………………………………橋本慎一朗

資産評価の文脈──国際課税と消費型所得概念を視野に入れつつ…………浅妻章如

租税法上の行政制裁の現状と展望………………………………………………佐藤英明

租税法における後発的事由………………………………………………………渋谷雅弘

執行可能な税制──構造的執行欠缺理論を手がかりに…………………………巽 智彦

国税犯則調査の性質──犯則調査は法体系上の「夾雑物」あるいは「鵺」か…笹倉宏紀

租税法と公法

ジャン・ボダンの主権論に関する覚書 …………………………………………長谷部恭男

準死について──人に関する研究ノート………………………………………小島慎司

納税の義務…………………………………………………………………………石川健治

スタンリー・サリーと日本における行政法の変容──理由附記法理の「原意」をめぐって

………………………………………………………………………………………渕 圭吾

国立大学法人の組織法──国際卓越研究大学の制度を契機として …………山本隆司

パテント・リンケージをめぐる行政法上の問題点──医薬品承認制度と特許権保護の交錯

………………………………………………………………………………………興津征雄

国家の経済活動関与と租税国家──近代日本からの考察一斑………………齋藤 誠

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による積立金運用と法規定………太田匡彦

租税国家原理とは何か──その来歴とゆくえ……………………………………田尾亮介

財政法学の体系に関する試論──特に租税法との関係を念頭において………藤谷武史

公益法人と信託──実体法と税法の交錯…………………………………………溜箭将之

租税法とビジネスロー

ペイレシオ開示の目的とあり方について …………………………………………松井智予

米国におけるスタートアップ企業の組織形態選択と課税………………………星 明男

不正競争防止法における品質等誤認惹起行為……………………………………白石忠志

2023年企業結合ガイドラインにみるバイデン政権下の反トラスト政策 ………滝澤紗矢子

知的生産活動における「資源管理」と法──学際的な議論に向けた準備作業…小島 立

商標権の譲渡をめぐる問題──知的財産権取引と課税の議論の前提として …渕 麻依子

古稀をお祝いして

J. Mark Ramseyer/真砂 靖/古谷一之


中里実先生略歴/中里実先生著作目録

23 August 2024

租税法学会第53回総会案内

租税法学会のこのページである。

2024年10月26日(土)広島修道大学、総会幹事は奥谷健教授。

「経済社会の構造変化と租税手続の変容」 
租税手続における納税者の地位~税務行政の「ディストピア」と「ユートピア?」~
 報告:佐藤英明(慶應義塾大学) コメント:田中晶国(京都大学)
税務行政のデジタル化における納税協力の変容と諸課題
 報告:藤間大順(神奈川大学)  コメント:髙橋祐介(名古屋大学)
徴収手続における納税者以外の私人の役割
 報告:一高龍司(関西学院大学)  コメント:西山由美(明治学院大学)
徴収の制度設計についての理論的検討
 報告:藤岡祐治(一橋大学) コメント:渡辺智之(敬愛大学)

17 July 2024

租税法研究52号が公刊されていた

租税法学会の学会誌「租税法研究」の52号が公刊されていた。昨年同様、市販されているし、会費払込みのあった会員には近く送付される予定。

52号の統一テーマは、

 「資産」課税の諸相と現代的課題

で、2023年10月14日(土)に国士舘大学で開催された総会の成果を収録している。総会の企画趣旨は、租税法学会のウェブサイトにあるように、現代の変容する経済社会において「資産」に課税すること、という横断的な視点から検討するもの。4本の論説とそれらに対するコメント、当日のシンポジウム記録、さらに、研究動向を1年分まとめてレビューする学界展望、から成る。目次は以下の通り。

【論説・コメント】

地方資産課税としての固定資産税の現状と将来像──人と領域の結びつきの流動化も含めて──(手塚貴大)

手塚報告に対するコメント(柴由花)

財産評価に法又は司法ができること(浅妻章如)

浅妻報告に対するコメント(吉村典久)

人の国外移転と税制──人的資本への課税のあり方を中心として──(住永佳奈)

住永報告に対するコメント(青山慶二)

企業価値の源泉としての無形資産と租税法の対応(吉村政穂)

吉村報告に対するコメント(南繁樹)

【シンポジウム】「資産」課税の諸相と現代的課題

【学界展望】租税法学会の動向(堀治彦)

【その他】

租税法学会賞について/学会記事


今回も、報告・執筆者はもとより、企画を練り上げた運営委員の皆さん、円滑かつ快適な総会開催に尽力した総会幹事、原稿依頼から入稿管理に至る大変な作業を完遂した編集担当理事や有斐閣の皆さんをはじめ、多くの方々のお働きがあった。記して感謝したい。

06 July 2024

CFC税制とIIRの併存、立法趣旨

税制調査会「わが国税制の現状と課題 -令和時代の構造変化と税制のあり方ー」(令和5年6月30日)の国際課税に関する章の末尾には、注目すべき段落がある。授業のために答申を再読していて、重要な基本線を明らかにしていることに改めて気づいた。立法趣旨を検討する上で、有力な資料として利用できる。

1.この段落は、少なくとも次の5点を、はっきりと述べている。

  • 外国子会社配当益金不算入制度の導入後も、引き続き、全世界所得課税を原則としていること→以下引用の②
  • 外国子会社配当益金不算入制度の下で、軽課税国に所在する外国子会社への所得移転による租税回避に対しては、CFC税制による対応が必要であること→以下引用の④
  • 外国子会社配当益金不算入制度の導入後、CFC税制は、軽課税国への所得移転を租税回避として、それに対応するという意義を持つようになったこと→以下引用の⑤
  • CFC税制とIIRの併存→以下引用の⑦
  • IIRが親会社居住地国においてグループ全体の所得に対して一定の課税権を及ぼすものであること→以下引用の⑧

2.以上の読み取りを裏付けるため、以下に、この段落を引用する。答申の通し頁だと、236頁から237頁にかけて。引用にあたって、各文に冒頭番号を追加し、ポイントとなる箇所を青字や赤字に修正した。

①また、先述のとおり、平成 21 年度税制改正において、外国子会社の所得に係る二重課税を排除する方式として、従来の間接外国税額控除方式に代えて外国子会社配当益金不算入制度が導入されています。②他方、我が国の制度は、居住者・内国法人について国外所得を免除し国内源泉所得のみに課税する国外所得免除方式に移行したのではなく、引き続き、全世界所得課税を原則としています。③国外所得免除方式をとる場合、国外所得に対しては、源泉地国において課税関係が終了することとなるため、源泉地が軽課税国である場合は、二重非課税が生じるリスクが高いという問題があります。④同様に、外国子会社配当益金不算入制度は、子会社所在地国における課税のみで基本的に課税関係が終了することとなるため、軽課税国に所在する外国子会社への所得移転による租税回避に対しては、CFC税制等による対応が必要です。⑤CFC税制については、かつて間接外国税額控除方式をとっていた時期においては、配当時まで課税が繰り延べられることを租税回避と捉えて、それに対応するという意義を有しているという理解も可能でしたが、外国子会社配当益金不算入制度の導入後は、軽課税国への所得移転を租税回避として、それに対応するという意義を持つようになったと評価できます。⑥平成 29 年度税制改正においては、BEPSプロジェクトの基本的な考え方に基づき、CFC税制の見直しが行われました。⑦CFC税制に加え、「第2の柱」(特にIIR)が導入されると、租税回避か否かにかかわらず、外国子会社の所在地国における課税が極端に軽課税である場合には、親会社居住地国で最低税率15%に至るまでトップアップ課税がなされることとなります。⑧こうした動きは、子会社所在地国のみで課税を終了させるのではなく、親会社居住地国においてグループ全体の所得に対して一定の課税権を及ぼすものであると評価できます。

3.上記引用部分の⑦の前提として、これに先立つ答申232頁で、CFC税制とIIRは目的が違うから併存すると整理している。これも引用しておこう。ちなみに、ここにいう「外国子会社合算税制」は「CFC税制」と同義である(答申225頁参照)。

なお、既存の外国子会社合算税制は、経済的な実体の乏しい子会社等を用いた租税回避に対処することを目的とするのに対して、「第2の柱」は、各国共通の最低税率の導入により法人税引下げ競争に歯止めをかけることを目的とするものであり、両者は目的を異にする別個の仕組みです。国際的なルールにおいても、CFC税制は「第2の柱」と併存するものと整理されており、対象となる企業の事務負担には一定の配慮を行いつつ、引き続きそれぞれの制度の目的を果たすことが重要です。

28 June 2024

フィナンシャル・レビュー<特集>21世紀における課税と納税―税務執行を巡る国際的議論を踏まえて―

フィナンシャル・レビュー156号<特集>21世紀における課税と納税―税務執行を巡る国際的議論を踏まえて―が公表されていた。目次をコピペしておこう。

<特集>21世紀における課税と納税―税務執行を巡る国際的議論を踏まえて―

 

 序文:21世紀における課税と納税
―税務執行を巡る国際的議論を踏まえて―(PDF:596KB)
 

  1. ローマ数字1.本特集に至る経緯
  1. ローマ数字2.本特集の概要
  1. ローマ数字3.今後の展望

増井 良啓

(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

 租税手続法の規範的意義
―合法性原則の再構成―

本文(PDF:859KB) 

  1. ローマ数字1.はじめに――本稿の目的
  2. ローマ数字2.租税手続法の規範的意義
  3. ローマ数字3.合法性原則の原意
  4. ローマ数字4.合法性原則の手続法上の意義
  5. ローマ数字5.おわりに――納税義務に関する和解・協定の許容性

巽 智彦

(東京大学大学院法学政治学研究科准教授)

 私的主体が発行する「貨幣」の規制に関する覚書
―ステーブルコインに関する規制を中心に

本文(PDF:978KB) 

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.BOE報告書の概要
    3. ローマ数字3.BOE報告書の規制モデルの検討
    4. ローマ数字4.おわりに

行岡 睦彦

(神戸大学大学院法学研究科教授)

 EUのDAC 8
―暗号資産取引を対象とする税務当局間の自動的情報交換―

本文(PDF:988KB) 

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.DACの改正経緯
    3. ローマ数字3.DAC 8
    4. ローマ数字4.EUのMiCA
    5. ローマ数字5.OECDのCARF
    6. ローマ数字6.DAC 8によるその他の改正(暗号資産関係以外)
    7. ローマ数字7.DAC 8提案の評価等

大野 雅人

(明治大学グローバル・ビジネス研究科教授)

 EUにおける付加価値税の課税権配分についての覚書
―第六次指令時代の欧州司法裁判所の諸判例からみる研究課題―

本文(PDF:937KB) 

    1. ローマ数字1.プロローグ
    2. ローマ数字2.VATの拡大の系譜
    3. ローマ数字3.理念型としての仕向地課税
    4. ローマ数字4.EU-VATのplace of supplyルールの構造とその具体化
    5. ローマ数字5.結語

藤原 健太郎

(東北大学大学院法学研究科准教授)

 BEPS 2.0の紛争解決
―グローバルな課税の枠組みにおける実効的な紛争予防 / 解決の必要性―

本文(PDF:949KB) 

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.2つの柱による解決策における税の安定性への取組み
    3. ローマ数字3.既存の国際的な紛争予防 / 紛争解決の枠組み
    4. ローマ数字4.結語

中村 真由子

(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士)

 マネー・ロンダリング対策と税務の交錯
―迷走する議論の整理と将来的課題―

本文(PDF:1809KB) 

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.マネロン罪の概説
    3. ローマ数字3.リスクの分析・評価(準備段階)
    4. ローマ数字4.情報の共有(実働段階)
    5. ローマ数字5.犯罪収益の剥奪(事後段階)
    6. ローマ数字6.むすび(結語・おわりに)

野田 恒平

(内閣法制局参事官)

 納税協力と納税非協力
―税務長官会議の報告書を中心として

本文(PDF:1175KB) 

    1. ローマ数字1.はじめに
    2. ローマ数字2.報告書の通覧
    3. ローマ数字3.納税協力を確保するための戦略

増井 良啓

(東京大学大学院法学政治学研究科教授)