10 March 2015

東京地判平成25年11月19日判例時報2219号33頁 外国税額控除の手続要件

所得税法95条2項による控除限度額の繰越使用が、手続要件を満たさないとして否定された事例。原告は個人納税者であり、デラウェア州法に基づくLPSを組成する旨の契約を締結して、同契約に基づく分配金の受領や持分の譲渡について、外国所得税を納付していた。
  • 平成19年分の所得税の確定申告時に、控除限度額に余裕があった。
  • 平成20年分の所得税の確定申告には、外国税額控除に関する明細書の添付がなかった。
  • 平成21年分の所得税の確定申告で、平成21年分の控除限度超過額が生じたので、平成19年分の国税の控除余裕額を繰越使用した。
渋谷税務署長は、平成20年分の所得税の確定申告書に所得税法95条6項所定の事項の記載等がなかったから、同項の手続要件を満たしておらず、平成21年分の所得税について95条2項に基づく外国税額控除ができないとして、更正。納税者がこれを争ったのが本件である。

東京地裁は、繰越を認めなかった。判決文は裁判所ウェブサイトで読むことができるが、手続要件の趣旨について、次のように述べる。
所得税法95条6項は,同条2項の規定は,繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年以後の各年について当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額を記載した確定申告書を提出した場合に限り適用するものとしているところ,当該要件は,・・・・・同条2項に基づき控除し得る額が前3年以内の各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額のそれぞれに基づいて計算されることを踏まえて,その計算の基礎となる控除限度額及び外国所得税の額を当該各年分の確定申告書に記載する方法で逐次明らかにさせておくとともに,納税者に従前の控除余裕額を翌年以降の繰越使用の対象とする意思があることを各年分の確定申告書上に明らかにさせることよって,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図ったものと解される。
これをうけて、6項の解釈として、次のように判示する(下線は引用者による)。
そうすると,所得税法95条6項にいう「各年」とは,「繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年」,すなわち,同条2項に基づく控除を受けようとする年の前年以前3年以内であって同法施行令224条1項に基づきその年の控除限度超過額に充てられることとなる国税の控除余裕額の存在する年のうち最も古い年を始まりとして,それ以後同法95条2項に基づく控除を受けようとする年までの各年を意味するものと解すべきである。また,このような解釈は,「各年」につき開始時点以外には明確な限定を付していない同項の文理に照らしても自然なものということができる。

つまり、「各年」とあるのは、平成19年だけでなく、平成20年も意味するというのである。これを本件にあてはめて、次のように結論した。
原告は,平成20年分確定申告書には,その添付書類を含めて,同年の控除限度額及び同年において納付することとなった外国所得税の額を記載していないのであるから(前記前提事実(2)ア),同条6項所定の同条2項の適用要件を満たしたものということはできない。
東京高判平成26年3月26日で、控訴棄却。

本件の係争年分のあとになるが、平成23年法律114号による改正で、当初申告要件が廃止された。現在の所得税法95条1項には5項に手続要件があり、確定申告書だけでなく、修正申告書または更正請求書で書類添付をすれば足りる。したがって、現行法の下では、平成21年分の確定申告をする時点で、あわせて、平成20年分につき修正申告か更正請求をしてそこで記載と書類添付を行う、という形での追完が可能であろうか。

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