この判決である(確定)。原告は、大阪市中央卸売市場で牛枝肉の卸売業を営んでいた。原告は、出荷者から販売の委託を受け、せり売りで買受人を決定する。原告は卸売金額の3.5%の委託手数料を受け取るにすぎず、残りは出荷者の取り分になる。
原告の立場が商法上の問屋(商法551条)であることに、当事者間で争いがない。
出荷者 ―――原告
(委託者) (問屋)
↓
買受人
(相手方)
すなわち、原告と相手方との外部関係は、問屋が売買契約の当事者となる。委託者と原告との内部関係は、委任関係となる。
大阪地裁は、消費税法13条につき、
資産の譲渡等を行った者の実質判定は、その法的実質によるべきものと解される(このように解すべきことは、当事者間に争いがない。)。
としたうえで、原告が牛枝肉の譲渡を行ったものと判断した。その帰結として、消費税法39条1項の貸し倒れによる消費税額の控除の適用を、原告に対して認めた。その際に、次の点を判断要素としてあげている。
- 原告が売買代金回収リスクを負うこと
- 売買契約の締結に出荷者が特段の関与をしていないこと
- 買受人に対する瑕疵担保責任を負うのも原告であること
この事件について、仲谷栄一郎=中島真嗣「問屋(コミッショネア)の税務問題(上)」NBL1029号(2014年7月)70頁、76頁は、仕入税額控除がどうなるか、という問題を提示している。この点、西山由美・判批・税研178号(2014年11月)227頁、229頁は、ドイツ売上税法3条3項が、委託者と問屋の間で委託物品販売の課税取引をみなす立法的解決を講じていること、連続取引について中間の取引を省略するルールもあること、を紹介する。日本法はそのような特則を欠くから、まずは解釈論によって、消費税法の取引の鎖をつなげていくことが課題である。その意味で、信託・遺産・組合について「『私法上の帰属』の精確な考察」に立脚した課税要件規定の設定と適用が不可欠であるという主張(藤谷武史「所得課税における法的帰属と経済的帰属の関係・再考」金子宏ほか編『租税法と市場』(2014年)184頁、200頁)は、問屋についても妥当する。
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