02 July 2021

BEPS包摂的枠組みで、柱1と柱2について声明

139か国のうち、130か国が声明に合意した。アイルランドのように入っていない国も協議を続けるのだろう(アイルランド政府の声明はこれで、全体的には支持するが、柱2について15%というところに留保をつけたといっている)。

声明の英語とフランス語はここ。吉村教授が日本語の抜粋訳とコメント(はやい!)。

6月のG7の声明から一歩進んだ点をみてみよう。まず、柱1について、G7声明は「大規模で高利益の多国籍企業について10%の利益率を上回る利益のうちの少なくとも20%に対する課税権を市場国に与える」としていた。これに対し、今回のIFの声明では、柱1について、たとえば、

  • スコープ→全世界200億ユーロ以上売上高かつ10%以上収益率を有する多国籍企業とされた(条約発効後7年後のレビューを経て円滑な実施を条件に100億ユーロ)
  • ネクサス→市場国から少なくとも100万ユーロの収益を得る場合とされた(GDPの小さな国は25万ユーロ)
  • 分割対象利益(quantum)→残余利益(=売上高の10%を超過する利益)の20-30%を、収益ベースの配分キーを用いて市場国に配分するとされた
  • ほかにも、課税ベースの決定とか、セグメンテーションとか、二重課税排除とか、マルチ条約を策定することとか、いくつかの点が具体化された
つぎに、柱2について、G7声明は「国別での15%以上のグローバル・ミニマム課税にコミットする」としていた。この点につき、今回のIFの声明では、たとえば、
  • 最低税率→所得算入ルール(IIR)と軽課税支払ルール(UTPR)の目的のための最低税率は少なくとも 15%とされた
  • 共通アプローチ→採用は義務ではないが、採用を選択した国は、IFの合意に整合するやり方で実施し、他のIFメンバーの適用を受け入れるものとされた
  • スコープ→BEPS行動13(国別報告)で定められた7億5000万ユーロの閾値を満たす多国籍企業とされた
  • 実効税率の計算→国ごとの計算
  • 実施時期→2022年に法制化、2023年に発効
  • ほかにも、カーブアウトとか、米国GILTIとの共存とか、いくつかの点が明記された
なお、柱1と、一国主義的措置としてのデジタルサービス税との関係については、今回のIFの声明では「新しい国際課税ルールの適用と、すべてのデジタルサービス税その他類似の措置の撤廃との間で適切な調整を行う予定」とされている。(EUの対応についてこの記事)。

IFの声明は、結びとして、次のステップについて以下のように記している。
  • グローバル最低実効税率と適用除外の間に直接の関係があることを認識する
  • 2021年10月までに合意の枠内での設計上の要素につき最終決定をするために協議を続ける
来週のG20を経て、さらに議論が続いていく。なお、以前のプレスリリースのように、今回も日本語版のプレスリリースが出たら、追記したい。→出たので追記(2 July 12:36 Tokyo Time)。

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