20 July 2021

IFA Japan Branch Webinar: PPT

2021年7月19日15時~16時30分、IFA日本支部のウェブセミナーがZoomで行われた。平川雄士会員の司会で、川端康之会員が「租税条約の解釈 - 濫用防止とPPT(主要目的テスト)」と題する報告を45分。しかるのち、吉村典久会員、赤松晃会員、中村真由子会員のコメント、フロアからの(書面)質問、それらに対する川端会員の応答があった。

多くの知見が披瀝され、MLI7条がいかにパワフルな規定であるかが参加者の間で共有されたと思う。セミナーの記録は近く、租税研究に掲載される予定。

セミナーのやりとりの中で、私の印象に残った点を記しておこう。

  • 日本の二国間所得税条約におけるPPTの導入状況が、いまや7-8割に達しつつあるとのこと。入っていない条約例についても、今後時間がたてばMLI7条型のPPTで埋まっていく見通し。古いタイプのPPTを有する条約もいくつかあるので、当面の間その解釈適用が実務上問題になる。
  • PPTで実務感覚が変わったか?これに対しては、がらっと変わったというわけではないが、もやもやした感じだ、という率直な感想が述べられた。もやもやしているというのは、濫用というくらいだとよっぽどひどいもののはずだけど、「主たる目的の一つ」というからにはけっこう広いんじゃないか、ちょっとしたことで否認されちゃうかも、危機管理できているのか、こういったあたりが不明確だから。
  • 租税条約の特典を利用するための条約漁りとは別に、りそな銀行外国税額控除事件の事案のように、租税条約を利用しないことで現地国の納税を増やし、そのことにより(居住地国たる)日本において外国税額控除によって納税額を減らす、といったパターンも対象になるか。川端会員の日税研論集78号の論文251頁の指摘を参照しつつ、この点について吉村会員からコメントがあり、川端会員からsaving clauseの関係など応答があった。私は思わず、組織再編税制の「適格外し」のプランニングに対して法人税法132条の2の適用があるか、という論点を思い出した。租税条約上に「税務署長の認めるところにより計算することができる」云々の適用効果をもつ規定があれば、法人税法132条の2と同様の問題状況になるだろう。これに対し、MLI7条1の適用効果は、「当該特典は、与えられない(a benefit under the Covered Tax Agreement shall not be granted)」というもの。よって、条約の特典が与えられず、相手国の国内法の水準で課税されている場合に、条約の特典を与えて相手国(=現地国)の課税を増やす、という方向には働かないように思われた。
昨年から連続開催してきた日本支部ウェブセミナーも、今回で一区切り。開催に尽力された関係各位に感謝。秋以降、APACのウェブセミナーや、IFA 2021 Virtual Eventなどが予定されている。

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